第8話 六門寺さんの気持ち
Side六門寺星奈
ついに今日は蒼君との買い物……そして私が告白する日だ。
気持ちが高鳴りすぎて約束の時間の一時間前に来てしまったよ。
しばらく待っていると、軽快そうに歩いており、初めて会った時とは違って顔が生き生きとしている蒼君が来た。
笑顔で駆け寄り、声をかける。
「やあ蒼君、随分と早いね。私も今来たところだよ。じゃあ早いけど行こうか。私に付いてきてくれ」
しれっと嘘をつきながらショッピングモール内をゆっくりと歩き、目的の紳士服専門店に向かう。
「そう言えば星奈さん、今日は何を買うんですか?」
「あぁ、そういえば言っていなかったね。今日はハンカチとネクタイを買う予定だよ。贈り物としては定番だが外れることもないと思ってね。色や形は蒼君だよりだからよろしく頼むよ!」
さて、父さんに合いそうなものは……お、この二つが似合いそうかな。
そうして私は選んだ二種類のハンカチとネクタイを蒼君に見せる。
「蒼君、この四つの中から選ぼうと思うんだけど……どうかな?」
「うーん、この中だったらこっちの方を選びますね。こっちの方が僕的には貰ってうれしいですし」
なるほど、蒼君的にはこっちが好みなのか。
「そうか! じゃあこっちにしよう」
よし、これで用事は終わった。
蒼君と一緒に腹ごしらえでもしようか。
「さて蒼君、付き合ってくれてありがとう! お昼ご飯は何が食べたい? 何でも好きなものを言ってくれ」
「星奈さん、僕、あそこのハンバーガーが食べたいです!」
「よしわかった、じゃあ行こうか!」
そうして和気あいあいと話しながらハンバーガーを食べる。
さて、そろそろだね……。
「蒼君、これを食べ終わったら一緒に私たちが友達になった公園に行かないかい? そこできちんとお礼を言いたいんだ」
はやる心を抑えながら蒼君との思い出の公園に向かう。
「思えば君との仲が一気に深まったのもここだったね。君の反省ノートに書かれたことの改善点について語り合ったっけ」
「そうですね、あの時は助かりました、たくさんの生の声を聞けたのでコミュニケーション能力がかなり向上しましたよ!」
「…………蒼君、君に一つ言いたいことがあるんだ」
さて、言うぞ……まどろっこしいのは一切なしだ……!
「蒼君……私と付き合ってくれないか!」
遂に言った!
もう後戻りできないぞ……。
たとえこれで蒼君との関係が壊れることになったとしても、ここで告白しとかないと後悔することになる気がする。
蒼君は私の思いにこたえてくれるだろうか……?
「……星奈さん、僕でいいんですか……?」
蒼君が自信なさげに答える。
だが、私の答えは決まっている!
「あぁ、君がいい!」
「……わかりました。ですが付き合うには一つだけ条件があります……僕のトラウマを打ち破ってください!」
なるほど……トラウマか、きっと相当なものなのだろう。
だが、真正面から突破して見せる!
「君の言うトラウマが何かはわからないがその挑戦、受けよう!」
「では星奈さん、僕の唯一にして無二の攻略法を先に教えておきます。……絶対に拒絶しないでください」
なるほど、了解した。
君を受け入れてみせるよ。
「あぁ、わかった!」
「では…………質問します、貴女は何故僕のことが好きなのですか?」
そう来たか、でももちろん言う事は決まっている。
蒼君を真っすぐ見据え、正直な言葉を伝える。
「私が君を好きになった理由はたくさんあるがその中でも大きいものを理由として上げよう。まずは何といってもこの前指の怪我を治療してくれた時だ。あの瞬間、私は君に恋をしていると自覚したんだよ」
「じゃあ次……僕は残念ながら他人のことが怖いです。貴女はそれをどう打ち破りますか?」
君の攻略法はすでに構築済みさ。
きっと君のことを落せる!
「それは……こうさ!」
ここで蒼君に抱き着き、蒼君の心の壁を破壊しにかかる。
「え、あ、ちょ、せせせ星奈さん!? い、いきなり何を……?」
「これが君の心の壁を打ち破る策だよ。どうだい? 君の心の壁は破れたかな?」
「ごめんなさい、ごめんなさい……まだ足りないです……」
よし、押してダメなら引いてみるだ。
「なぜ謝るんだい? 私は最後まで付き合うさ、君のトラウマを打ち破るまではね」
そうして私は蒼君の目をじっと見て弟を撫でていた時とは違う感情で頭を撫でる。
「私は君のことが好きだ、受け入れてくれるかい?」
「……はい!」
王子様系隠れ巨乳に傘を貸したらいつの間にか仲が進展していた件について 自由 山明 @ziyuusannmyou-36
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます