第2話

私は長いこと、このゴンドラに乗ってる。


長いこと乗っていても誰にも気づかれたことはなかった。

今日は、最近にしては珍しく朝から人が多いな~と思っていたの。さっき乗った人たちの会話で初めて知った。今日でここは終わりなんだ。だからいっぱい人が来るんだ。嬉しいような、でもやっぱり寂しい。けれど、寂しいのはずっとおんなじ。しばらく誰ともふれあったり、話したりすることはなかった。いつの間にか、「寂しい」という感情は、常のものとなっている。

ちょっと感傷に浸っていたけれど、次にわきあがってきたのは、ムカつく、だった。何に対してかよく分からない。そっか、終わっちゃうんだ。今まで、乗ってくるいろんな人を一周分の間、見守ってきたけれど、最後くらい意地悪してやろうかな。あっ、でも誰にも気づかれることはないんだった。そう思い出したら急に虚しくなった。

さみしいな。

それは気づいてもらえないからか、今日で日常が終わってしまうからか、はたまたどちらの意味もあるのか、分からなかった。


思いもしなかった。今になって私を見つける人がいるなんて。


最後の日というときに、初めて私に気づいてくれた人、あなたは私を見てものすごく驚いていた。

ちょっと悪戯したくて、おどかそうと思って、思いつきで手招きしてみた。そしたら乗ってくれるんだもんね。びっくり。

話していると案外気があった。最初は、おっかなびっくりといった顔をしていたが、そのうち緊張もほどけてきたのだろう、どうでもいいことをいくらでも話した。でも、私のことなんにも聞いてこないね。それでいいんだけどね。



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あなたはずっと遠くへ行ってね @demeria

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