縁斬

@dasakuwotarenagasu

第1話

「結くん、ちゃんと弔辞、読めるかな……?

 まだ若いのに、唯一の肉親まで亡くしてしまって……可哀想に。

 これから何か困ったことがあったら、このテルアキさんに声をかけてね」


そう、優しく声をかけてくれたはずの和尚が、

今──俺の腹を、かっさばいている。


あまりに唐突で、あまりに非現実的。

理解が追いつかない。

だが、腹を駆け抜ける火花のような痛みだけが、

それが事実であることを告げていた。


痛みに耐えきれず、あふれ出した涙が視界をぐにゃりと歪ませる。

焦点の合わないまま、俺は黒い袈裟をまとった“和尚”を睨んだ。


だが、そこにいたのは、体は異様にねじれ、裂けた口元がにたりと笑う。

まさしくバケモノだった。


そして奴は──

また、俺の腹を容赦なく切り裂いた。


焼けるような痛みが、腹の奥から再び蘇る。

熱を帯びた内臓が皮膚を押しのけて、体外にあふれ出す。

グロテスクな光景が、痛みだけでなく、吐き気までも加速させていく。


(ああ……俺、死ぬんだな……)

(てか──なんでこんなことになってるんだっけ?)

(俺、婆ちゃんの葬式をしてただけなのに……)


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