最終話 さらば!江田島ギャグファミリー



あの日、浜川家はフスドンと爆発した。

理由は単純だ。

「古い家のガス管を父の焼肉が勝手に直そうとした」からである。

「なあに、ワシの勘でだいたいわかる!」

と言って、マイナスドライバー1本で挑んだ結果、見事に吹き飛んだ。爆風は半径50メートルを焼き尽くし、周辺住民は口をそろえて言った。

「ついに業人一家が業(カルマ)を清算した」と。だが、業人親子は生きていた。なぜならその時、焼肉は畑の中で「白菜とテレパシーが通じるか実験」しており、業人はその白菜の葉陰にいたからである。白菜はつえぇ。

とはいえ、家は全焼。思い出も、引きこもりの巣も、電子レンジもドア夜叉も焼肉のAVコレクションも全部吹っ飛んだ。

「……どうする、息子よ」

「どうするって、何が?」

「家がないってのは、つまり……旅立てってことじゃないか?」

「え、それただの無計画放浪じゃね?」

「違う。これは人生の再構築じゃ」

「今のセリフはNHKのドキュメンタリーで聞いた事があるだで」

かくして、二人はあてのない旅に出た。

行くあてもない。金もない。地図もスマホもない。あるのはボロボロのリュックと、焼肉が昔スナックでパクってきた灰皿だけ。


一日目。神社で寝る。

「これ、不法侵入じゃ…?」

「神様はワシらに寛大だ。たぶん」

二日目。川で洗濯してパンツ流す。

「パンツが自由になっていくだで!」

「そうやって、オマエも自由になるんじゃ!」

三日目。猿に荷物を奪われ、拳で対話。

「この…野生めがッ!」

「父ちゃん、猿に指輪プロポーズされてるけど」

七日目。初めて泣く。

「もう帰ろうよ…オレたち何がしたいの?」

「……」

「ずっと逃げてきたんだよ。引きこもりっていうけど、たぶん、父ちゃんも家って殻に引きこもってたんだよな。母ちゃんが出ていってから…」

焼肉は何も言わずに空を見上げる。夏の星が、しんと燃えている。

「ワシが悪かった。全部、なにもかも放り出して。だから…最後くらい、オマエと歩きたかったんだよ。どこへでもいい。ただ、一緒に」


沈黙が続く


「オトサン」

「……ん?」

「パンツ、ないんだよ」

「……ワシもだ」

そして二人は笑った。パンツも家もない親子が、満天の星の下、声を上げて笑っていた。


ー時は流れて3年


二人は、どこかの町で小さな定食屋を開いている。名を「業人焼肉食堂」。看板メニューは「親父焼き(謎の粉末付き)」と「息子チャーハン(火力不安定)」。


評判はまあまあだ。常連客がある日、尋ねた。

「マスター、あんたら…何者だったんだい?」

焼肉は、しばらく黙っていたが、やがてニヤリと笑ってこう言った。

「ただの…バカ親子だよ」

そして焼肉が、厨房の奥から叫ぶ。

「このバカタレ!!!!」

業人は笑いながら

「馬鹿息子で悪かったな!!」


皿の音、湯気、笑い声。

どこか懐かしい昭和の風が、店内を吹き抜けた。


― 完 ―


ご愛読いただきありがとうございました。作者多忙につき連載を終了させていただきます。浜松彰の次回作にご期待下さい。

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