第11話 江田島の大文豪爆誕!?


「親父……俺、小説家になるわ」

朝食の納豆をかき混ぜながら、業人(41)が言った。

「はあ!?急にどうした!?味噌汁にペンでも浮かんどったんか!?」

「俺の人生、このままじゃただの未完の大器で終わる気がするんだよ……」

「その前に完成した人間になってくれ!!」


業人の部屋には、なぜかタイプライター(風キーボード)が導入された。

彼は毎日パジャマ姿で、意味深なポエムを書き始めた。


〈業人作品より抜粋〉


靴下の匂いを嗅ぎながら僕は思った。

「これが資本主義か」と。


〜中略〜


鏡の中の自分が笑っていた。いや、笑ってなどいない。

それはきっと、網戸だった。


「業人お前……なんのジャンル狙っとるんじゃ!?」

「哲学的スメルリアリズムっていう新しい潮流を狙っている。」

「誰もついてこねえぞ!!!」


地元の文芸誌『瀬戸内文学』に投稿した業人。

数日後に封筒が返ってくる。

「前衛的すぎて、判定不可能」

「読み終わったスタッフが1名、行方不明です」「次回作には主語、助詞を入れてください」

「まさかの全方向からの拒絶!!!!!」


「わし読んだぞ、あれ。意味がなさすぎて逆に感動したわ!!」


町の文学サークル「海と句読点の会」に参加した業人。参加者平均年齢は78歳。全員、紙の匂いで詩が書けるレベル。


「テーマは生です。俺の作品、聴いてください」


『生(なま)』

生ビール、生卵、生足、生乾き。

俺たちはどこまで生でいられるんだろう。

生きてるだけで、生すぎる。


(完)


参加者は呆れて言う。

「お前それ……スーパーのチラシか何かか?」

業人は癇癪を起こす。

「フスードンドン」


「業人よ……お前の作品、たしかに意味不明すぎる」

「わかってんじゃねぇか……」

「でもな……なんか……読んでると腹立ってくるんじゃ。腹立って、心に残るんじゃ」

「それ褒めてる!?けなしてる!?」

「どっちでもええ!!わしが編集者になってやる!!!」

こうして、父親の熱血指導赤ペン地獄が始まった。


「変なところで改行するな!」

「一文が100字超えるな!」

「魂の匂いってなんじゃ!!!!!」

「あと、エッチな比喩多すぎじゃボケェ!!!」


原稿はボツ。投稿も全滅。

それでも業人は言った。

「俺……まだ、書きたいことがあるんだ……」

「まだ懲りんのか……ほんま、お前ってやつは……」


親父はしみじみ呟き、そして空へ向かって――

「このバカタレ!!!!」

「馬鹿息子で悪かったなァァァ!!!!!!」


その叫びは風に乗り、瀬戸内文学編集部の壁を1枚だけ震わせた。

その後、業人の第2作『江田島ファンタジーゼロ章』は、町内の小学校に道徳教材として誤って配布され、回収された。


ちゃんちゃん また明日ー


次回ついに感動の最終回!!

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