〈コメント〉
今回は新しい試みとして、テーマ味覚「酸味」というお題でした。ぽんことやっている創作会が七十回目だったので、こうなりました。十回程度ごとに三題噺以外もやっている(僕の方のパロディ「鶴の恩返し」もその一つです)ので、今後も自主企画でちょっと変わったお題をやると思います。
さて、みなさんは「物語の味」について思い当たるところはあるでしょうか。例えば、第六十五回のお題にもあった「ビター(スウィート)エンド」はどうでしょう。ここでは「幸福」を「甘味」、「不幸」を「苦味」と表しています。「甘酸っぱい思い出」はどうでしょう。青春の初々しい恋の記憶が蘇るかもしれません。他に、「酸いも甘いも噛み分ける」とい言い回しもあったりします。こうみると、僕たちは多くの出来事を味わっています。
しかし、多いのは「甘味」と「苦味」ではないでしょうか。味には五大要素というものがあります。「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の五つです。「甘味」と「苦味」は「幸福」と「不幸」の味として分かりやすいですが、他の三つはどうでしょうか。「塩味」と「うま味」は特によくわかりません。個人的な意見としては、「泥臭い青春スポーツ漫画」に「塩味」、「大きな夢へのサクセスストーリー」に「うま味」を感じます。同意を得られるかは怪しいです。
そして、今回のお題である「酸味」です。「酸味」は先の例より、みんな感じてはいるはずですが、はっきりとは説明しにくいのではないかと思います。「甘酸っぱい」では、「悲しさ、恥ずかしさ」が「酸っぱい」で表されていると思います。「酸いも甘いも」では、「辛い、苦しい」を「酸い」と表しています。この違いは、おそらく、想定される「酸味」の違いでしょう。前者では、レモンのような柑橘類の爽やかな「酸っぱさ」のイメージがあります。後者では、中華料理の酢豚や酸辣湯麺のようなお酢などに由来する強烈な「酸味」を感じます。
結局のところ、「酸味」はマイナスのイメージであるものの、その意味合いに大きな幅があると思います。なので、今回は「酸味」をどのようなイメージで、どういう意味で捉えるかが問題になります。
僕は一番意味が分かりやすい「甘酸っぱい」から「甘味」を引くことにしました。つまり、「楽しくも悲しい初々しい青春の思い出」から「楽しい」などのプラスの要素を抜きます。残るのは、強烈に酸っぱい匂いがする腐敗の進んだ果実のはずです。このイメージで書きました。汚くて恥ずかしい思い出したくもない黒歴史です。ただ、そうなると辛さである「苦味」に寄ってしまうので、「恥ずかしい」を特に意識することにしました。嫌ではあるけど、辛いかと言われるとしっくりこない絶妙なラインです。一応、「レモン味の炭酸飲料」「汗」という「酸味」要素も少し混ぜました。「酸味」は感じられたでしょうか。
文体としては独り語りにしました。女性が一人で言葉をつないでいき、読者を隣に寝転ぶ聞き手としています。湿度を保ちつつ、改行と空行でスピード感を調整しました。あと、初めてカクヨムのキャッチコピー機能を使いました。どちらかと言えば、前書きのような感じです。
正直、だいぶ気持ちの悪い話を書いた気がしています。
第70回 たいして面白くもない話 佐々木キャロット @carrot_sasaki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます