Ⅲ-13.家族選挙③
「……ナナナ」
私が呟くと、ジンは遅れて扉の方へ顔を向けた。
ソーイもテネスも、驚いて目を丸くしている。私も例外ではない。痛む胸を押さえて、何度も瞬きをした。
「遅くなってごめん、僕も投票に参加する」
そこに立っていたのは、正真正銘のナナナだった。
「待ってください」
声を荒げたのはソーイだった。
「この人はどなたですか? 家族には関係がないはずです」
「こいつはナナナだ。オマエたちがここに来る前に魂石の割れた、俺たちの家族だよ」
オパエツは勝ち誇ったように笑った。
ソーイの顔は青ざめ、ジンを縋るような目で見た。
テネスはなおも信じられないといった顔でナナナを見つめる。
ジンだけが、口を真一文字に結んでいた。
私は、みんなの顔を見て、頭の中に残っていた大事なものの正体が分かった。
「イヨ、詳しい説明は後でするから、決着を付けよう」
ナナナは少し気まずそうに、でも精一杯笑ってくれた。
一際強い胸の痛みが走る。
「さぁ、再投票だ!」
オパエツが力強く宣言する。
オパエツ、テネス、ナナナの三票でこの投票は終わる。
宙にかざそうとしたオパエツのその手を、私はすべての力を振り絞って叩いた。
「ちょっと待って」
防衛反応で私とオパエツの手は強く反発した。
全員の視線が私に向く。
そうだ。全員の目を見れば分かる。
私の大事なものは、家族だった。
私は全員に心の中で謝りながら、宣言した。
「私、この投票を棄権する」
胸の痛みが弾け、私は意識を失った。
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