Ⅲ-14.家族①

「聞こえるか。聞こえているか。イヨが倒れて二日目だ。聴覚は一番最初に復旧すると聞く。もし聞こえていたら安心してくれ」


 ……。


「聞こえるか。聞こえているか。イヨが倒れて三日目だ。聴覚は一番最初に復旧すると聞く。もし聞こえていたら安心してくれ」


 安心、する……。


「聞こえるか。聞こえているか。イヨが倒れて四日目だ。聴覚は一番最初に復旧すると聞く。もし聞こえていたら安心してくれ」

「僕も、話しかけていい? イヨ、聞こえる? 僕もこれくらいから聞こえてたかも。イヨ、聞こえる? 大丈夫。もうすぐ動けるようになるからね」


 動く……。


「今、指動かなかった?」

「本当か?」

「テネスも呼んできてもいい?」


 テネス……。


「イヨ、生きてるの? 起きて」

「触れるな! 今、炎化した魂が魂経に馴染もうとしているところなんだ。防衛反応は毒だ」

「オパエツ、また動いてる」


 オパエツ……。


「ナナナも生き返ったんだから、イヨもきっと生き返れるよ」


 ナナナ……。


 イヨ……。


 ……。


「聞こえるか。聞こえているか。イヨが倒れて五日目だ。聴覚は復旧しているな。無理をする必要はない。イヨの身体は着実に良くなっていっている」


 オパエツの声。安心する。


「……お、ぱ」


 ……。


 ……。


「聞こえるか。聞こえているか。イヨが倒れて七日目だ。魂経に魂は行き届いた。少しずつ、身体は動くはずだ。どうか、目覚めてくれ」

「イヨ、起きて」

「イヨ」


 私は、ゆっくりと目を開けた。


 目の前には、ナナナ、テネス、そしてオパエツの顔があった。


 彼らは銘々、歓声を上げて私の目覚めを喜んでくれた。


 でも、私はそこにジンとソーイがいないことが気になった。

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