人間と詩(うた)

風野里省

人間と詩

あんまり空が遠過ぎて

あの日ゆめ見た現在を

忘れてしまうくらいです


あんまり海が広いので

明日あしたを夢みた今日の日を

しまってしまうくらいです


天と地の間には

浮かんだ傷の所在もなくて

まだ涙さえ出るのです


少年とその調べ

あとでなき日の後悔に

とうに終わっているとさえ……


けれども空や海や樹が

焼けた記憶になる前に、


たまにはちゃんと人間と

思い出せれば、よいのです——

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人間と詩(うた) 風野里省 @nijitoko

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