詩的な物語だと思う。

都会での挫折から故郷への回帰を通じて始まるノスタルジックで内省的な物語として、祈李の過酷な過去と孤独感を軸に、澄希との友情や「亡夢伝承」の神秘性が織りなす人間ドラマを丁寧に描いていると思った。

全体として普遍的なテーマである喪失と救済を情感豊かに表現した魅力的な作品だけど、ストーリーのテンポがややスローペースで過去の回想や内省が冗長に感じられる。
怪奇要素の具体的な展開やクライマックスへの推進力が不足している。

文体は詩的で感覚的な描写が優れているものの比喩の多用が物語の流れを停滞させる場合があり、テーマの深みが哲学的な考察で際立っているが、抽象的な部分が多く現実との結びつきが曖昧なためもう少し具体的な出来事で補強してほしい。

祈李の繊細で自己否定的な内面が過去の閉じ込めやいじめのエピソードを通じてなんかいいなって思いました。澄希の明るく包容力のある性格がなんかいいです。真那の伝承への執着が調査の情熱と嫉妬の葛藤をリアルで、友寄の穏やかさと勇樹の未熟さが脇役としてバランスを取っていますが、全体的に背景や動機の掘り下げが不足している。

謎への考察として、「亡夢伝承」の起源が孤独な少年の祈りから来るものとして祈李の過去(両親の因縁、町の負債)と並行し、奇跡がもたらす代償が記憶の喪失や感情の麻痺として現れるのかなって面ます。あとは音楽プレーヤーが母親の形見として伝承の鍵となり、祈李の救済が本当の意味で完了していないので、今後の展開で奇跡の再現や代償の顕在化がクライマックスになるのではないかと考察しています。

全体として未解決の謎が読者の想像を掻き立てる魅力がある。もし続きがあるなら伝承の現実的な影響を知りたいです。素晴らしい作品をありがとうございました!

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