第40話 やべー女たちと世界の明日

ついに聖地へたどり着いた。


純白の大理石で作られた巨大な神殿が、朝日を浴びて輝いている。


「ここが...」


真一が見上げる。


「世界の中心」


聖地には、不思議な静けさが漂っていた。


争いも憎しみも、ここでは意味を失うかのように。


「聖杯の封印解除まで」


アルケミアが時計を見る。紫の旅装束が、長旅でくたびれている。


「あと3時間」


全員が、神殿の中央へ向かった。


* * *


中央の祭壇に、聖杯を安置する。


七色に輝く聖杯が、最後の時を待っている。


「みんな」


真一が仲間たちを見回した。


エリザベート、セラフィーナ、アルケミア、リリス、美月。


ルシファー、ファントム。


グレイブ、バルキリー、レオン。


そして、ここまで同行してきた人々。


「ここまで、ありがとう」


「何言ってるの」


エリザベートが微笑む。黒のドレスが、聖地の光に映えている。


「まだ終わってないわ」


* * *


「そうよ」


セラフィーナも頷く。純白のローブが、神聖な雰囲気を醸し出している。


「最後まで、一緒よ」


「みんな...」


美月が真一の腕を取る。白いドレスから、温かさが伝わってきた。


「真一様の願い」


「きっと届くわ」


しかし、その時。


「待ちなさい!」


最後の敵が現れた。


なんと、各勢力のリーダーたちが、手を組んでやってきたのだ。


「我々も願う権利がある!」


* * *


「まだ諦めてなかったのか」


真一がため息をつく。


「人類の存続が」


「それがどうした!」


終焉教団のリーダーが叫ぶ。


「新しい世界を作ればいい!」


「そうだ!」


大人至上主義帝国の代表も。


「効率的な世界を!」


永遠の幼年団も。


「純粋な世界を!」


完全なる無の教団も。


「全てを無に帰して、やり直すのだ!」


* * *


「お前たち...」


リリスが呆れる。黒のドレスを翻しながら。


「自分のことしか考えてない」


「それこそが人間だ!」


敵のリーダーたちが、一斉に襲いかかってきた。


最後の戦いが始まった。


しかし、今回は違った。


「俺たちの味方は」


真一が叫ぶ。


「ここにいる全員だ!」


聖地まで同行してきた人々が、立ち上がる。


元は敵だった者たちも、今は仲間だ。


* * *


激しい戦いの中、封印の時間が迫る。


「あと10分!」


アルケミアが叫ぶ。


敵のリーダーたちは、執念深く聖杯を狙う。


「どけぇ!」


しかし、やべー女たちが立ちはだかる。


エリザベートの策略。

セラフィーナの聖なる力。

アルケミアの錬金術。

リリスの幻惑。

美月の癒しの力。


そして、ルシファーの千年の魔力。

ファントムの神業。


全員が、全力で聖杯を守る。


* * *


「5分前!」


時間が迫る中、ついに敵のリーダーの一人が聖杯に手を伸ばした。


「終焉を!」


しかし、その手を掴んだのは。


「ダメよ」


子供の姿のままのレオンだった。


「未来は、僕たちのもの」


「大人が勝手に決めるな!」


子供たちが、一斉にリーダーに飛びかかる。


「うわぁ!」


リーダーは、子供たちに押し倒された。


「1分前!」


* * *


「今だ!」


真一が聖杯に手を伸ばす。


しかし、別の手も同時に伸びてきた。


エリザベート、セラフィーナ、アルケミア、リリス、美月。


「え?」


「一緒に願うの」


エリザベートが微笑む。


「だって、私たち」


セラフィーナも。


「仲間でしょ?」


全員の手が、聖杯に触れた。


瞬間、時が止まったかのような静寂。


そして、聖杯が問いかける。


『汝らの願いは?』


* * *


全員が、心を一つにして願った。


「この世界を、より良い世界に」


「みんなが笑顔でいられる世界に」


「やべー女も、普通の人も」


「子供も大人も」


「全ての人が、自分らしく生きられる世界に」


聖杯が、激しく輝いた。


『...面白い願いだ』


『欲望ではなく、調和を願うか』


光が世界中に広がっていく。


『判定を下そう』


『人類は...存続に値する』


* * *


光が収まると、世界に変化が起きていた。


まず、子供たちが元の姿に戻り始めた。


「お、俺の体が!」


グレイブが歓喜の声を上げる。筋骨隆々の体が戻ってきた。


「やったぁ!」


バルキリーも、大人の姿に。赤い髪が勇ましくなびいている。


しかし、それだけではなかった。


世界中で、対立が和解に変わっていく。


憎しみが理解に。

争いが協力に。


「これは...」


セラフィーナが涙を流す。


「本当の世界平和」


* * *


「やった...」


真一が安堵の息をつく。


「やったな!」


しかし、聖杯から最後の言葉が。


『だが、忘れるな』


『この平和は、与えられたものではない』


『汝らが、日々作り上げていくもの』


『聖杯は、ただきっかけを与えたに過ぎぬ』


そして、聖杯は砂のように崩れ去った。


「聖杯が...」


「もう、必要ないってことね」


エリザベートが納得したように頷く。


* * *


エピローグ


一ヶ月後、パラダイス・シティ。


街は、以前にも増して賑わっていた。


「いらっしゃい!」


エリザベートが不動産屋を再開。今度は、本当に良い物件を紹介している。


「安全で快適な物件ですよ♪」


セラフィーナは、本当の意味での平和活動。


「みんなで協力しましょう」


アルケミアは、人助けの薬を開発。


「副作用なしよ!」


リリスは...相変わらずだった。


「愛の形は人それぞれ♪」


でも、破壊ではなく相談業に。


* * *


真一は、ギルドマスターとして街を治めている。


「今日も平和だな」


「真一様〜」


美月が駆け寄ってくる。相変わらず一途だ。


「お昼ご飯、作りました!」


「ありがとう」


ファントムは、時々街に現れては去っていく。


「退屈しないわ、この街」


ルシファーも、千年ぶりの友人たちと楽しそうだ。


グレイブとバルキリーは、冒険者として活躍。


レオンは、国に戻って立派な王子として成長している。


* * *


「なあ、真一」


エリザベートが、ある日聞いてきた。


「後悔してない?」


「何を?」


「もっと自分の欲望に正直な願いもできたでしょ」


真一は笑った。


「これが、俺の一番の願いだよ」


「やべー女たちと、楽しく暮らす」


「それが一番幸せだ」


夕日が、パラダイス・シティを黄金色に染める。


やべー女たちとの物語は、まだまだ続く。


でも、それはまた別の話。


【第2章 完】


次回予告:

新章「やべー女たちと魔王城」

「平和になった世界に、新たな脅威が!」

「魔王復活の兆し!?」

「さらなるやべー女も登場!」

冒険は終わらない!

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死亡率70%の異世界物件に住んだら、隣人が世界を滅ぼす聖女と人体実験好きの錬金術師とNTRソムリエと悪徳不動産屋だった件 もこもこ @mokomokotanuki

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