第39話 聖地への道

聖杯護送の旅、3日目。


山道を進む一行に、疲労の色が見え始めていた。


「もう限界...」


美月がよろける。白いローブが土埃で汚れ、汗で透けて下着が見えている。


「美月!」


真一が支える。


「少し休もう」


しかし、エリザベートが首を振る。黒の旅装束も、かなり痛んでいる。


「ダメよ。立ち止まれば」


「追手に追いつかれる」


実際、後方からは複数の勢力が追跡してきていた。


* * *


「報告!」


斥候のレオンが戻ってくる。子供の体で、必死に走ってきた。


「後ろから大軍が!」


「どのくらい?」


「全部で...3000人以上!」


全員が青ざめた。


各勢力が、協力し始めたらしい。


「まずいわね」


リリスが崖の上を見上げる。黒の軽装が、風に揺れている。


「地形的にも不利」


「挟み撃ちされたら...」


* * *


その時、ファントムが前方から戻ってきた。


「前方にも敵よ」


黒いボディスーツが、戦闘の跡で破れている。豊かな胸の谷間が、ちらりと覗く。


「『完全なる無』の連中」


「500人ほど、待ち伏せしてる」


「前後から...」


セラフィーナが重い表情を見せる。純白のローブも、旅の疲れで乱れていた。


「これは、本当にまずい」


しかし、アルケミアが地図を見て叫んだ。


「待って!」


紫の旅装束から、古い地図を取り出す。


「ここ、近くに抜け道が!」


* * *


「抜け道?」


「『嘆きの洞窟』」


ルシファーが顔をしかめる。黒いドレスが、不安そうに揺れた。


「あそこは危険よ」


「千年前から、魔物の巣窟」


「でも、他に道はない」


真一が決断する。


「洞窟を通ろう」


「聖杯を守るためだ」


護送隊は、急いで洞窟へ向かった。


入口は、不気味な闇に包まれている。


「みんな、警戒して」


* * *


洞窟の中は、予想以上に広大だった。


「これは...地下都市?」


エリザベートが驚く。


確かに、古代の建造物が残っている。


「千年前の文明の跡ね」


ルシファーが説明する。


「聖杯戦争で滅んだ」


その時、壁画が目に入った。


そこには、聖杯を巡る戦いが描かれている。


「これは...」


アルケミアが壁画を解読する。


「聖杯の真実が!」


* * *


壁画には、衝撃的な事実が記されていた。


『聖杯は、世界を試す装置』


『七つの願いで、人類の本質を測る』


『そして判定を下す』


「判定?」


『人類が、存続に値するか否か』


全員が凍りついた。


「つまり...」


セラフィーナが震え声で言う。


「七つ目の願いで」


「人類の運命が決まる」


「そんな...」


美月が涙ぐむ。


* * *


さらに奥へ進むと、巨大な広間に出た。


そこには、無数の石像が並んでいる。


「これは...」


「千年前の人々」


ルシファーが悲しそうに言う。


「聖杯の判定で」


「石にされた」


その時、石像が動き始めた。


「侵入者...」


「聖杯を...渡せ...」


石の番人たちが、襲いかかってくる。


「戦うしかない!」


* * *


激しい戦闘が始まった。


石像は硬く、通常の攻撃が効かない。


「くそっ!」


グレイブが小さな拳で殴るが、びくともしない。


「効かねぇ!」


しかし、セラフィーナの聖なる光が効果を発揮した。


「浄化の光!」


石像が、光を浴びて崩れていく。


「安らかに眠って」


一方、リリスは石像を誘導していた。


「こっちよ〜」


妖艶な動きで、石像同士をぶつけさせる。


* * *


なんとか石像を倒し、さらに奥へ。


すると、巨大な扉が現れた。


「ここは...」


扉には、文字が刻まれている。


『真実を知る者のみ、通ることを許す』


「真実?」


真一が扉に触れると、声が響いた。


『汝、聖杯に何を願う?』


考える間もなく、真一は答えた。


「みんなが幸せになれる世界」


『...甘い願いだ』


『だが、それこそが人の本質』


扉が、ゆっくりと開いた。


* * *


扉の向こうは、聖地への近道だった。


「やった!」


しかし、出口には追手が待っていた。


全勢力が結集し、5000人の大軍。


「もう逃げられないぞ!」


「聖杯を渡せ!」


絶体絶命の状況。


しかし、真一は前に出た。


「みんな、聞いてくれ!」


「聖杯の真実を!」


そして、壁画で見た真実を語り始めた。


人類の存続が懸かっていること。

七つ目の願いが、最後の審判であること。


* * *


「嘘だ!」


「信じられるか!」


しかし、ルシファーが証言する。


「本当よ。千年前も同じだった」


「私は、それを見た」


次第に、追手たちが動揺し始める。


「じゃあ...下手な願いをしたら」


「人類が滅びる?」


「そうだ」


真一が断言する。


「だから、慎重に願わなければ」


「私たちを信じてくれ」


長い沈黙の後、一人また一人と武器を下ろし始めた。


聖地まで、あと一日。


最後の戦いが、近づいていた。


次回予告:

「ついに聖地へ到着!」

「七つ目の願いの時!」

「人類の運命を賭けた最終決戦!」

第40話「やべー女たちと世界の明日」最終回!

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