第23話 鉄拳制裁お父さん

「建物から離れたら整列して!貴方たちの命は保障します」

順兵や財閥に搾取されし弱き者の集まり「雑魚の会」の新リーダー、佐々木はタワマン住民の避難を先導した

趣味の悪い光沢のある服を着た中年の男が問うた

「なあ姉ちゃん、俺たちはあんたらにひどいことをした。なのになんで助けてくれるんだ?」

「死ぬことは償いではない。人を傷つけたら寿命が来るまで償い続けろ。創始者の理念です」

そう佐々木らメンバーに叩き込んでいた「雑魚の会」初代会長田中は秘密警察に嬲り殺された。


「お嬢さん、自壊モードは緊急停止できたわい」

「ありがとうございます、辰巳博士」

「ではいくかの、親としてまだやらねばならぬことがあるようじゃの」


「…揺れが収まった?」

天神は困惑しながら周りを見渡す。

すると下半身を糞尿まみれにした妖怪が細い目をギラギラさせ鳴き声をあげた

「オラは生き延びる運命なんだでプシィ!天神玲奈!まずオバエを犯したいな。」

ヒュッ

空気の擦れる音が気道から鳴る

「イヤッ…来ないで…」

「なあに、またおろせばいいだで。今ならガンヅキナカダシで許してやるだでよ?」

悪魔のように笑うその顔は


吹き飛び壁に叩きつけられた

「この業人があああ!お前はなぜ人様に迷惑ばかりかけるんじゃ!みんなめちゃくちゃじゃ!お前のせいじゃ!」

「オトサンヤメテ、タタカナイデ」

かつて暴君として振る舞っていたそれは身を守る剣と盾がなければ赤子のように泣くだけであった

元々体に対し大きな顔は腫れ上がり更に膨れ、鼻や口から鮮血が流れ出す

すると

ブリブリブリ…ジョワァ…

「げっ、この人また粗相しましてよ」

先程まで怯えていた天神が不愉快そうに離れるのを見て順兵はニタリと笑った

しかし辰巳は怯まなかった

ドゴッ

「キャケロビャ!」

マヌケな声をあげ吹き飛んだ順兵は大きく床に頭をうち動かなくなった

黒い気体のようなものが順兵の体から吹き出し、地面に染み込んでいった

「ふん、わしを誰だと思ってる。都合が悪くなればクソ漏らして逃げようとするのなんて父親なら知ってるからな」


天神は持っていた銃を蹴り佐々木の足元に滑らせた

「これはこれはおさかなさん。貴女たちを蹂躙した獰猛な獣を殺しなさい」

「貴女は殺しません。天神玲奈」

「田中の意向かしら?」

「それもですが…私は貴女と一緒に歩きたかった。ずっとそばにいたかった」

「あなた何を言って…」

「そこに転がってるやつが言ってたわね。『アンチは嫉妬してる』って。それは正しいわ。貴女を傷つけても心を引きつけたあいつがうらやましかった」

「…こうして話すのも高校の時以来ね。…ねえ、信じてくれないかもしれないけど私別世界の『私』に出会ったの」

「…そう」

「そっちでは貴女と私、仲良く過ごせてたのかなって」


沈黙が流れた

「私たちが国を主導した暁には死刑を廃止するつもりよ」

「佐々木、それってどういう…」

「待ってる、おばあさんになっても。それから一緒に過ごそう」

「ふふ、田中、あんたの弟子はとんでもないやつね。天神財閥令嬢、天神玲奈は「雑魚の会」に投降します」


「痛てて…」

「順兵、いや布酢怒のやつ生きてたのね!」

「佐々木さん、待っておくれ」

辰巳が止めに入った

「あなたたちは、誰ですか?僕が何者か知ってますか。」


どうやら頭を強く打ち記憶を失ってしまったらしい。

順兵のあの手この手を知り尽くした辰巳ですらこんな状態は経験したことがなかった。

「詐病の可能性もある。そちらに渡してくれないかしら」

「嫌だ、といったら?」

佐々木は困ったような顔をしてから語った

「今から言うことは独り言よ。『布酢怒は隠し持っていた煙幕で革命軍の目をくらませた。その隙に辰巳博士を誘拐しその場を去り、現在も行方不明である』」

「佐々木さん…恩に着ますわ…」

「霧島の店に行くといいわ。それ高いんでしょ?」

辰巳の手にはしっかりあちらの世界からきた玲奈のピアスが握られていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る