第22話 タワマン司令室
「え、人?あれは誰ですの?」
「田中さん…僕の大切な先輩だよ。作業所にきたばかりで敵意むき出しだったころも根気強く僕に話しかけてくれた。歳下だけど尊敬する大切な人だ」
「こいつから聞いたと思うが『こっち』の田中はもう殺させただでアヘオホ!同じ目に遭わせてやってもいいんだでえ?嫌ならオラに従いやがれ!」
4人は黙って両手を挙げる。
「さすが向こうの世界のオラ!賢くて素敵ダデェ?おい天神財閥のやつら!あいつらをなんとかしやがれ!」
天神の息がかかった警備員たちが次々と銃をもってこちらに来る。真ん中には『こちら』の世界の玲奈もいる
「おほ^〜さすがオラのガチ恋だで。はやくはやくあいつらを消すだで〜♪」
ズドン
「え?」
右手からポタポタと赤黒い液体が垂れる。それを視認した瞬間布酢怒は不快な音を立て始めた
「痛い痛いだでえええええ!オバエオバエアンチアンチ!誰かなんとかしやがれ!」
「…手を汚すのも他人任せ。銃の引き金を引くくらい自分でやりなさいな」
「ふぐう…ナンデ!」
「…私はあなたのガチ恋リスナー『でした』」
天神は語る
「あなたの踊りに惚れた。これは本当だった。会社の金を好き放題使われても、他の女を集めてハーレムを作りたいと言われても、この国をめちゃくちゃにされても、貴方さえいればいいと思っていた。あの日までは」
「あの日…なんのことだで?」
『ねえ順兵さん。私、貴方との宝物を授かったの。名前は何にする?男の子と女の子どっちだと思う?』
『おろしたほうがいいと思う』
『…え?』
『だから!おろしたほうがいいっていってるだで!』
『…どうして?うれしくないの?』
『当たり前だで。オラに構ってくれる時間が減るわけだし安定期間に入るまではオバエにガンヅキナカダシできないんやろ?そんなのごめんだで』
『そんな…ひどい…』
『嫌ならここを去っても構わないんだでえ?天神財閥がやったことはオラは知らないだでアッアッアッ』
「赤ちゃんをお空に送ったあと、私は白人捕虜を侍らせるようになった。なぜかわかるかしら」
「さみしいからじゃ…オバエまさか!」
「もう遅いわよ」
屈強な男たちが布酢怒を捉えた。元々小柄な上手負いでは敵わない。あっと言う間に布酢怒は縛られて動けなくなった。
「これがなにかわかるかしら」
冷たい鉄の筒を布酢怒の眉間に押しつける
「この国をめちゃくちゃにした罪、その命で償ってもらいます。」
「イヤッ!イヤッ!イヤアッ!」
「安心なさい、私もあとで逝くわ…地獄で会いましょう」
「みじを」
ぶっ、ふすっ、ぶり、ぷすっ、ぶりい、ぶちち……。
思わぬ悪臭に天神は怯んだ。その隙に布酢怒は転がりながら部屋の隅にあるスイッチを押した
ゴゴゴゴゴ!
「布酢怒!何をした!」
順治は叫ぶ
「この建物はなんだかわかるだで?」
「…高い建物ってことしかわからない」
「ここは実はタワマンだで!富裕層がたくさん住んでるマンション、ここは今から倒壊する!オバエラも死ぬだでよアッハッハッ!」
「そんな…何も知らない民間人をまきこむなんてなんて業人だ!」
「順治さん、とおっしゃったかしら?今ならまだ間に合うわ。あなたたちは逃げなさい」
「でも!それじゃタワマンに住んでる人たちは!」
「この荒廃した国でお金持ちになるにはね、私たちみたいに悪いことをしないと無理なの。ねえ、あなたは『向こう』の世界の天神玲奈なんでしょ?」
視線の先には不安げに原口にしがみつく玲奈がいた
「別な世界線であっても私が立派に生きていることを知れてうれしかった。強く生きるのよ」
天井が崩れ天神たちと玲奈たちは完全に分断された。
「時間がねえ!早く逃げるぞ!」
原口に急かされやむなく一行は退却の準備をした
オラは悪くないオラは悪くないあいつらアンチお前アンチ
無意味な屁を出し続ける布酢怒を横に天神は目を閉じ辞世の句を考え始めた
「玲奈ちゃん、死んで償うなんてエゴだよ」
尻の大きな女性は老人を連れ崩れゆくタワマンに走っていった。老人は順兵の父であった。
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