第2話「彼女の想い」

翌日、学園にて…


「流星か…おはよう」


「あぁ、おはよう。和樹、緊張しているだろ?俺が、宮下と柳澤さんが会話できるように、

セッティングしてやろうか?」


「緊張しているがお膳立ては要らねえ!

俺の言動で彼女に判断して欲しいからな!!」


「流石に決意が揺らがないか…」


「応援しているのか貶しているかどっちだよ…」


「なーに、あのモブを駆け抜け、イケメン達を差し置いて話が出来るか見物だと思ってなw」


「モブって流星だろ!!それにあれはイケメンと言う陽キャな!!」


「俺がモブ以下の底辺だってことは分かってるさ。ほら、休み時間も迫っているのだから柳澤さんと話してこいよ!」


「あぁ。行ってくる。」



決意を固めた宮下は柳澤が居る方向に、

堂々と足を進めると周囲がざわついた。



「柳澤さん、話をするのは初めましてだよね!俺の名前は宮下和樹!まぁ知ってるよね!!」


「うん…初めてだね。それで用件は何かな?」


「今日の放課後、お話ししたいことがありますので、ご予定が空いていましたら、別棟べつむねの体育館裏に来ていただけませんか?」


「・・・」


「突然、話しかけられて嫌な感情が芽生えていたら断って大丈夫だよ!」


「1度考えてみるわ!

 返事は期待しないでね。」


「ありがとう!話しかけて悪いな‼」



周囲から怪訝けげんな目で見られたが、

宮下は1度たりとも後ろを振り返らず、

自分の席に戻っていった。


なお、宮下の席の後ろが七瀬の席であり、

出入口に近いのである。

しかし、彼らの想い人の席は離れている。



「お疲れ様!」


「ふははは‼緊張を乗り越えた俺を見たか‼」


「話しの切り出し方が不審すぎるだろ!

話しをするのは初めてだね。ってなんだよw」


「ダメ出しありがとよ‼感謝してるぜ!」


「でも、クラスメイトの言動が怖かった…

って、泣かれないだけマシだったな‼」


「このチャラさがいい塩梅だからな!

誠実さが垣間見えたのだろうな!」


「誠実さ?いかがわしい思考の間違いでは?」


「この野郎…俺が外見を誤魔化している小心者だって知ってるだろ…泣くぞ?」


「学園一を口説く漢が先に陥落するか?」


「お手上げだわ…これが底辺の男っておかしくねえか?」


「口よりも学だよ」


「学より金だろ!」


「ははは!これは1本取られたぜ!」


「話を戻すが、ダメ出しするぐらいなんだから手本を見せてくれよ‼」


「仕方ないな!見てろよ!!」



七瀬は席を立ち、おもむろおもむくまま足を進め、

あるクラスメイトに話しかけた。


流星が話しかけた相手は伊坂栞

クラスメイトとは談笑していないが、

柳澤とはよく談笑している。



ーーー

俺が話しかける相手とは柳澤の友人の伊坂栞

彼女らは親しい友人だと秘密にしているが、

胸の内を見せてほしい…

ーーー



「伊坂さん急に話しかけてごめんね…

伊坂さんって、この前の中間考査の点数良かったでしょ?」


「なんで知ってるの?ストーカー?」


「いやいや、俺って底辺だよ?」


「だから?」


「俺より点数高いでしょ!」


「当たり前よ!」


「ふふ…点数高いんだ…」


「なっ、なによ!!」


「お願いしますぅぅぅ…勉強を教えてください‼」


「い、いやよ!」


「あっ、そう…?なら、いいかな~!」


「まっ、待って!!」


「伊坂さんどうしたの?」


「誰にも話しかけられない私に、話しかけてくれたし、特別に勉強を教えてあげるわ!」


「えっ⁉本当⁉ありがとう‼

 Rain交換しようよ!!」


「いいわよ!はい!」


「ありがとう~!後でRainするね!」


「うん…」



七瀬は颯爽と自分の席に向かった直後、

彼女の顔が紅潮していた。

彼が一度でも振り返っていれば、

彼女の幸せそうな顔が拝見できていたのに…



ーーー


愉快な会話だなぁ…私も素で楽しみたい。

いかがわしい視線を浴び続けたくない。

外見を見栄で包み込み、抑制しているが、

私も七瀬らのように自由でいたい…

そして彼ともっとお話しがしたい…

彼からの視線なら嬉しいわ!!

七瀬くん⁉直球すぎない…?

あっ…栞…赤面しちゃダメじゃない!!

それにしても幸せそうな顔してるわ…


ーーー


突然、話しかけられて吃驚したわ。

掴みどころがない人だったわね…


でも、彼が"底辺"と謂われている人ね。

私の幼馴染みの遥が、度々、

口にしていた彼の友人。


遥は人の視線や告白を断ることに疲弊しているが、日々、輝いている…


私も彼らのように明るくなりたいわ。

それに話しかけられて嬉しかったわ…

また話せるかな…


ーーー



「どうだ?これが俺のやり方ってなw」


「おい…チャラ男よりもチャラさが目立っていてうぜえ‼それと、ちゃっかり連絡先交換してるのが余計に腹立つ‼」


「羨ましいだろ?」


「あぁ、羨ましいしダメ出しできないわ。」


「いや、ダメな所あっただろ…」


「何処がだよ?」


「質問を質問で返した所と、引き留めて貰えると高をくくって戻ろうとした所だな!」


「確かに駆け引きに成功しただけで、

誰に対しても使える手ではないな。」


「その通り。普通は点数が見えたことを伝える。だが、聞かれたことに答えるよりも、

俺の底辺さが上回っているから出来る手法!」


「底辺さを威張ることではねえよ!!」


「ははは‼底辺なのは自負しているからな」


「自負するな‼底辺脱却してくれ‼」


「出来ることなら既に脱却しているよ!」


「それはそうだな。なんかごめん。」


「謝られるとみじめに感じるからやめてね!」


「ふははは!!ざまぁ!」



~~~



昼休み、柳澤に呼び出された七瀬は、

別棟の空き教室に向かった…


「放課後、七瀬との関係を宮下に伝えてもいい?」


「いいぞ。気負うなよ。」


「申し訳ない…」


「和樹を想うなら謝るな!」


「ありがとう…」


「じゃあな!」



柳澤と会う前、七瀬は和樹にRainを送っていた。その待ち合わせ場所に早足で向かった。



~~~



体育館裏にて…


「遅くなって悪いな。」


「大丈夫だが教室で話せないこととは何だ?」


「柳澤の事で話がある。」


「なんだよ?」


「俺と柳澤は利害の一致で協力している!」


「それで?身体の関係になったか?」


「好意があると思っているのか!?」


「いや。ただの確認」


「ないな。有り得ない…」


「だろうな!知ってたよ!それだけか?」


「あぁ、それだけだ!」


「ハラハラさせんなよ…七瀬の癖に…」


「仕方ないだろ。柳澤に関係をバラすって、

言われたら俺が一番困るからな…」


「俺が知らないところで何してるんだよ…」


「大事になれば単位がなくなるからな!」


「本当に何してるんだよ‼」


「今日の放課後わかるさ!さっさと教室に戻らないと休み時間終わるぞ?急げ~」


「放課後だな。七瀬も残っておけよな!」


「うい~」


~~~

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クラスで見向きもされない彼女と底辺な彼 一ノ瀬麗奈 @neko312

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