短編小説  少尉へ

緋色

終焉

前線にいる私が指揮している第27師団もこの作戦で終わりか…

この国が負けるということだ。領土拡張をして世界からの非難を受け、挙句の果てにこの防衛線を死守せよなど…相変わらず上層部は無理を言うな…


中将!ここは危険です、本土へ帰還してください!!!


私はここで君たちを残していくことはできない。


無礼を承知で申し上げます、あなたはここで死んでよい人ではありません!


君はなぜわかってくれないんだ…私は多くの部下を殺した。部下が死ぬとわかりきっていた作戦を実行した。

狂った上層部を止められなかったから、同胞を死地に追いやった。


私にはどうすることもできなかった・・・


悔やむのは後でいくらでもできます!今はここを離れてください!

必ずあなたの手腕がまた必要になる時が来ます!


もういい!私だけおめおめと本国に帰れるか。


いい加減にしてくれ!…あなたを失えば講和のあと誰が生き残った軍人の面倒を見てくれるのですか!あなたを殺さないために、何人の若い者が死んでいったか、もうお忘れですか!


もう言うな…わかった。

あなたのような若い部下を残していくのなら、最期に私のわがままを聞いてくれないか…


なんでしょう、中将。


少尉、命令だ。必ず生きて戻ってこい。本国で私に元気な姿を見せてくれ


了解いたしました!私の命を懸けてその任務を実行いたします!



あれから半年も経ったのか、以前ここで皆で酒を飲んだことを思い出す…

みな、私から離れて行ってしまった。国のため、私のためにと命を懸けて戦ってくれた兵士達に顔向けができないな。


なあ、少尉。どうして最後君は笑って私を見送ったんだ…

……答えてくれよ、少尉。


桜の花が、ただ静かに舞っていた。


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