Day31 ノスタルジア (職員)
「減りましたね、忘れ物」
「あと集中講義くらいでしたっけ」
「そ。だから前期のあれこれは今日中にまとめて所定のフォルダに置きましょうね」
「「「はい」」」
「はい、では今日も一日がんばっていきましょう」
「はーい」「はい」「はいっ」
資料室に事務室が併設されているのか、はたまた事務室に資料室が併設されているのか。鶏と卵のようだと思いながら、今日も朝礼が終わる。
先週末で前期の試験が終わり、週が明けて日が過ぎるごとに資料室や自習スペースの利用者は激減した。研究棟に出入りする人数も気持ちばかり減っているように感じるし、出張の手続きもこの時期は増えるので、まぁ全体的に人が減る季節になったのだろう。何せ、夏休みだ。
PCをロックして、席を立つ。
「掃除行ってきます」
「お願いしまーす」
掃除セットを持って向かう先は、3階の自習スペースと教室。月曜日に1階から始めて、今日で三日目。清掃業者には机や黒板の掃除までは頼めないので、綺麗にするなら、職員がやるしかない。さすがに毎日やるほどの人手の余裕はなく、試験期間の前に一応ざっとの掃除は手分けして行った――試験前からの汚れでカンニング判定が出てしまうといけないので――が、試験期間が明けた後、もう少しきちんとした掃除をすることにしている。
今日はどれくらいで終わるだろうか。がらり、と開けた教室は事務室から最も遠い部屋。戻るときに気が楽なので、遠い部屋から順繰りにやっていく方式を採用している。
弁当を食べたときに何かを零したのだろうと思われるような汚れから、相合傘の落書きまで。消せるものをひたすら消して回って時計を見ると、20分が経過していた。
午後は席でデスクワークをしたいので、午前中のうちに終わらせなければ。そう思いながらも、各部屋でひとつは懐かしさをおぼえる落書きを見つけてしまって、半ば楽しんで消していくうちに、時間はあっという間に過ぎていくのだった。
さて、私の夏休みには、何をしよう?
【文披31題】安曇理工科大学の夏 ritsuca @zx1683
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