正しく生きるとは
酩蘭 紫苑
第1話
私は大学生である。これを書いている今はそうだし、数年後見返す頃にはおそらく違うだろう。
その数年後が来るかは知らない。
大学生に限ったことではないが『将来について』考えるように促される時がある。
それは学校の先生であったり、親であったり、はたまた見ず知らずの画面の向こうにいる人間かも知れない。
ほとんどの人間が言うことは一貫しておらず、二つに分かれている。
『挑戦』か『安泰』か。
私は後者を取ってきた。
趣味の時間よりも勉強をとって来たし、賭け事にもあまり手を出さない。
それらは勉強することによって良い大学に入って、高給な会社に入って……。それだけだ。
賭け事はリスクがあるからしてこなかった。
『挑戦しろ』、と言う人は無責任だと思っている。
スポーツの決勝戦で怯えている私に「挑戦しろ、挑戦して勝って見せろ」などと言うのは正しいとは思う。
しかし、YouTubeなどで見かける好きなことをして生きてゆくというのはいささか無責任なのではないだろうか。
脱サラしてラーメン屋をやりたい。
中退して企業を立ち上げる。
それらのやり方はネットにいくらでもある。
だけど成功の保証はないし、彼らは保険ではない。
しかし、挑戦しなければ成功がないのも事実である。有名なラーメン屋になるにはまずラーメン屋を立ち上げなければならないし、社長になりたいなら成り上がっていくよりも自分が会社を立ち上げた方が確実だ。
だが、無責任である。
彼らは成功を奪い取るような真似はあまりしないが同時に失敗を保証してくれない。
彼らの思い通りになるように情報が動かされている場合もある。
「フランチャイズから始めた方が〜」
「このセミナーで学びをつけて〜」
彼らの言っていることは嘘ではない。
そこに学びがないとは言い切れないからだ。
だが一番、気がつかなければならないことは彼らの利益になることだろう。
世の中には他人も、自分も幸せになる方法というのはあまりない。スタートの時点で彼らは利益を望んでいる。
しかしながら、彼らよりも利益を出す人間がいるのも事実だ。そこには夢がある。
私としては『挑戦』を語るものは無責任だと思っている。でも同時に挑戦をしなければならないと実感し始めた。それには理由がある。
「人はいつ死ぬか」それが分からないからである。
健康に気にしてた知り合いは糖尿病になったし、金持ちで有名だったあいつはいつの間にか死んでいた。将来を約束されていたような奴が、だ。
高学歴と呼ばれるあいつは大学で精神を病んで中退した。逆にバカと言われていたあいつは田舎で楽しく仲間と過ごしている。
お金があろうか、健康であろうか、それらに怯えて対策しようが、結局、それらはいつ消えてもおかしくない。
4年付き合った彼女と別れた奴もいるし、0日婚のやつが幸せな家庭を築いていたりもする。
取り柄があったような、美人で、人付き合いも良かった子より一つの趣味で人気を博した人だっている。
今までのことには全て『運』が絡んでいるだろうと思う。
もしかしたらあの時、外に出なかったらあいつは死ななかったし、もしあの時、あの子と出会わなければ別れることもなく、大人になって再会し、長く付き合えたかもしれない。
私が何を言いたいのかというと『何が起こるか分からないのだから挑戦してみよう』ということである。
私は無責任だ。だが結論としてこれしかない。
安定を取ったところでそれがいつの間にか崩れることはざらにあるんだ。そういう意味で私は安定を挑戦し続けたとも言える。
この世界はどこかおかしい。
1日で億万長者になるやつもいれば、生涯報われることないまま、過酷な労働をして死んだ人間もいる。
なら賢く、馬鹿げて生きてみようではないか。
『挑戦』ができるように別の『挑戦』をする。
私なら作家になりたい。だから大学を辞めてそれ一本にする。
これも立派な挑戦だと思うし、ひょっとすると上手くいくかもしれない。
しかし、失敗したとき、挑戦の手段は限られる。
大卒を取り、働きながら挑戦することだって出来る(執筆を両立するのは大変かも知れないが)。
そこで働いた経験をもとに本を出すことだって出来るし、働いて、十分にお金を貯めた上で何年間か執筆に集中することだって出来る。
大変な選択肢を取れば取るほど、次の選択肢は簡単になっていくのかも知れない。
良い中学から良い高校に、そこから良い大学へと進むのはまさにそうだと言える。
ただ忘れないで欲しいのはそこに安定はないこと。
それは貴方のせいではない。
人生は基本的にクソだ。
だからこそ、そのクソを避けるためにも可能性に『挑戦』し続けるべきだろう。
正しく生きるとは 酩蘭 紫苑 @meiran_shien
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