『BLACK BRIDE―黒い花嫁と呼ばれた女―』を読んで、まるで静かに胸を撃ち抜かれるような衝撃を受けました。
「光を破壊するもの《ペルセポネー》、解放」――この言葉が放たれた瞬間、ページの向こうからこちらへ、凛とした覚悟が届いてくるようでした。魔術の使えないという“欠落”を抱えながら、それを武器に変えて戦う少女ユナ。その矛盾に満ちた存在が、だからこそこの世界の真の闇を撃てるのだと感じさせられました。
彼女の手にあるのは、ただの銃ではない。彼女自身の過去と、怒りと、祈りと、意志が込められた存在――《ハデス》。そしてそれが変貌する先にある“冥王の花嫁《ペルセポネー》”という禁断の姿は、まさに彼女という少女の内奥をそのまま映したかのようで、美しく、切なく、ただただ強かった。
また、剣士ジルとの関係性も忘れがたい印象を残します。敵同士でありながら、どこか心が触れ合うような、そしてそれが刃となって交わされるような……そんな危うい距離感。戦いのなかでしか言葉を交わせないふたりの間にある、熱と影と、名もなき誓いが胸に残ります。
“黒い花嫁”と呼ばれたその名の通り、ユナは血と硝煙のなかに咲くひとりの花のようでした。なぜ彼女は戦うのか。誰のために、何のために、銃口を向けるのか。その一発一発が、かつて奪われた過去への鎮魂であり、誰かの未来を守ろうとする小さな祈りにも思えます。
この作品の世界に、もっと深く触れていたい――そう素直に感じさせてくれる第一章でした。続きを読むのが、今はただ楽しみでなりません。
硝煙と血の匂いが支配する裏社会。
その中心にいるのは、冥府の名を刻んだ銃《ハデス》を手にする殺し屋ブライト=ブラック。
命令に従い、迷いなく引き金を引く彼女の眼前に立ちはだかるのは、かつての仲間、そして化け物のような敵たち。
欧州全土を影で牛耳る巨大組織《デウス・エクス・マキナ》。
その中核に存在する13人の戦闘集団《GUNS N’ AEGIS》。
銃と魔術、そして人間離れした力が交錯する世界で、少女の姿をしたサイボーグ、雷を纏う刀使い、怒れる人狼が戦場を駆け抜ける。
仲間は孤独を背負い、敵は人の皮を被って笑う。
ただ命令に従っていればよかったはずの仕事は、やがて「怒り」と「誓い」へと変わっていく。
これは、銃と正義の重さを天秤にかけながら、それでも誰かの命に応えようとする者たちの物語。