イヤミなクラスメート①
日に日に太陽がその熱を主張しはじめる六月後半。
朝はまだ涼しいけれど、それもいつまでもつかな?
なんて、自分の部屋の窓から入る光を感じながら、私はセーラー服にそでを通した。
鏡を見ながら制服のリボンを整えて、ハーフアップにした髪をいつものように右上でお団子にしたら身だしなみは完璧。
にこっと笑ってから、私は鏡の横に置いてある昔撮った家族写真に視線を向けた。
「……お父さん、お母さん。学校行ってくるね」
指揮者だったお父さんとピアノ奏者だったお母さんが正装して映ってるその写真に、「行ってきます」と声をかけてから部屋を出た。
階段を下りて一階に行くと、なにやらバタバタとあわただしい音が聞こえてくる。
「うそでしょー!? もっと早く起きる予定だったのにー!」
「レイおじさん、おはよう」
男の人にしては少し長めの髪をなでつけて整えながら、この家の家主でもある
背が高くてすらっとしたレイおじさんは
でも、今年で三十七歳らしいレイおじさんは結婚してないし、彼女もいないんだよね。
私としてはその原因はレイおじさんの口調にあると思ってるんだ。
「ああ、奏華ちゃんおはよう。朝食はテーブルに用意してあるわ。アタシもう出なきゃならなくて、今朝は一緒に食べられないの。ごめんなさいね」
高校の音楽教師をしているレイおじさん。
学校やちゃんとした場所では普通に男らしい言葉を使っているらしいんだけれど、なぜかプライベートでは女性っぽい口調なんだよね。
「何? 寝坊したの?」
「そうなのよ、今朝は吹奏楽部の朝練指導なのに!」
レイおじさんは吹奏楽部の顧問もしていて、大会が近くなると今日みたいに早朝や休日も駆り出されちゃうんだって。
「ごめんなさいね! じゃ、行ってくるわー!」
「いってらっしゃーい」
特急列車みたいに家を出て行ったレイおじさんを見送って、私はダイニングテーブルにあるトーストやスクランブルエッグを見た。
あわてていたのにちゃんと作ってくれるところはとてもありがたい。
同時に、ムリはしなくてもいいのにって思っちゃう。
一年ちょっと前、両親が亡くなってから私はお母さんの弟であるレイおじさんの家にお世話になってるんだ。
おじいちゃんおばあちゃんもいるけれど、父方の祖父母は海外在住だし、母方の方は……ちょっと、苦手なんだよね。
そんな私の状況をかんがみて、レイおじさんが「アタシと一緒に暮らす?」って言ってくれたんだ。
まだちょっと遠慮しちゃうこともあるけれど、レイおじさんとの暮らしは結構快適で本当に感謝してるんだ。
だから、今日みたいなときくらいは私が朝ごはん作ろうかな? って思ってるんだ。
こったのは作れないけれど、卵焼きくらいなら作れるし。
そんなことを考えながら、私はレイおじさんが作ってくれた朝ごはんをもくもくと食べ始めた。
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