マギ・ムジーク!

緋村燐

プロローグ

 なにこれなにこれなにこれ!?

 キィィィーーーン!って不快な音が部屋中に響いてる。

 思わず両耳をふさぐ私の横には、私と同じく小さな前足で耳をふさぐ小さなライオンの姿。

 かわいい見た目のライオンが心配になるけれど、どうにも出来ない状態にあせりばかりがつのる。

 そんな私に、一緒にいた目つきの悪い金髪男子が右手の拳を突き出した。

 キレイな顔を必死な表情に変えて何かを叫んでいる。


「え!? なに!?」


 聞き返しながら、今度は聞こえるようにって右耳だけ手をどかした。


水谷奏華みずたにそうか! 早く受け取れ!」


 そう叫んで、金髪の男子・音成律おとなりりつは右手を開いて持っていたものを見せる。

 銀色の、涙型と呼ばれる形状は私もよく知っているもの。

 手のひらサイズのそれを受け取るのをためらっていると、今度はライオンの方からも声が聞こえた。


「たのむソウカ! オマエにしかできないんじゃ!」

「で、でも」


 人の言葉を話したライオンに驚くヒマもなく、それでも迷う私に音成は怒ったような声で叫ぶ。


「カクゴ決めろ! 友だちを助けたいんだろ!?」

「っ!」


 その言葉に反射的に手を伸ばして、音成の手にある涙型の銀色の物体を手に取った。

 だけど、これをどうすればいいの!?

 戸惑い見返した私に、音成は口のはしを上げてニッと笑う。


「よし! それを使って、魔導指揮者マギ・ディリゲントとしてトリトナスを消滅させるんだ!」


「だから! そのマギ・ディリゲントって何なのよー!?」

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