鬼の世で祓う青年と、彼を守る者たちが紡ぐ──静かで痛い光の物語

闇が音もなく滲み出す鬼の世で
ひとり静かに祓いを担う青年──奏太

彼の優しさはあまりに細やかで
時に世界の残酷さを
そのまま抱きしめてしまうほど⋯⋯

地下闘技場に満ちる怨嗟
割れたガラス玉に潜む名もなき気配

そして彼を囲む者たち──
過保護なほど忠実な護衛たちは
光のない場所でこそ際立つ
〝温度〟を物語に与えていく。

本作は
闇と救いのあいだを
そっと往復するような物語です。

憎しみが渦巻く場所にも
微かな光を差し込む手があり──
その光が、また誰かの生を繋ぐ。

静かに広がる不穏と
人を想う気持ちの強さ。

この物語は
絶望の底に小さな灯りを落とすように
美しく、痛く
読み手を惹き込んで離さない一作です!

その他のおすすめレビュー

佐倉井 鱓さんの他のおすすめレビュー137