孤独に落ちた元女王と無色の少年が、静かに再生へ歩み出す物語

落ちていく者の孤独と
掬い上げる者の静かな温度──

この物語は
そんな二つの呼吸が
そっと触れ合う瞬間から始まる。

かつて校内の頂にいた少女は
ある日音もなく世界の端へ追いやられる。

そこへ寄り添うのは
誰より目立たず
しかし誰より真っ直ぐに人を見つめる少年。

彼の手には
音を紡ぐためだけに磨かれたギター。

彼女の胸には
誰にも言えぬ痛みと
まだ名もない渇望。

ふたりの距離は
恋とも友情ともつかず──

屋上の風や街のざわめき
深夜の息遣いに調和するように
静かに、しかし確実に変化していく。

きらびやかでも劇的でもない。

けれど、だからこそ──胸に残る。

〝再生〟の物語とは
こうして始まるのだと教えてくれる一作です。

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