孤独に落ちた元女王と無色の少年が、静かに再生へ歩み出す物語
- ★★★ Excellent!!!
落ちていく者の孤独と
掬い上げる者の静かな温度──
この物語は
そんな二つの呼吸が
そっと触れ合う瞬間から始まる。
かつて校内の頂にいた少女は
ある日音もなく世界の端へ追いやられる。
そこへ寄り添うのは
誰より目立たず
しかし誰より真っ直ぐに人を見つめる少年。
彼の手には
音を紡ぐためだけに磨かれたギター。
彼女の胸には
誰にも言えぬ痛みと
まだ名もない渇望。
ふたりの距離は
恋とも友情ともつかず──
屋上の風や街のざわめき
深夜の息遣いに調和するように
静かに、しかし確実に変化していく。
きらびやかでも劇的でもない。
けれど、だからこそ──胸に残る。
〝再生〟の物語とは
こうして始まるのだと教えてくれる一作です。