出血大サービス

テマキズシ

出血大サービス


「さあ本日は出血大サービスだ! 安いよ安いよ!!!」


「お、今日は五割引の日だ! ちょっと欲しかったお菓子買ってくる!」


 この村唯一の雑貨屋さんはちょっと変わった所がある。

 それは不定期に始まる出血大サービスの事だった。平日祝日関係なく突然始まるソレは誰も何故起きたのか分からなかった。


「おばちゃんこれください! そういえば毎日休まず働いているけど大丈夫? たまには休まないと!」


「なあ〜に気にせんでよろしい。私は好きでやってるんだから」


 ヘニャヘニャと笑うおばちゃんは元気そうに二の腕を見せてくる。

 今年何歳かは詳しく知らないがもう相当な御歳のはずなのにまるで疲れを感じさせず、それどころか元気すぎて私の方が疲れそうだ。


「そういえばサービスの日ってどうやって決めてるの?」


「それはねえ。今日が喜ぶべき日だからだよ」


「ふう〜ん…? 変なの」


 何度聞いても返事は同じ。

 今日が喜ぶべき日なのはどういうことなのか。村の皆その答えを知らなかった。


 私はおばちゃんにお礼を言うと彼氏の下へと帰っていく。

 昨日、人生で初めて彼氏の所で泊まったのだ。今日は人生で一番幸せな日。もしかしたらおばちゃんは私の幸せを予期したのかも。

 そんな事を考えながら私は帰路へついた。



 ……その次の日、事件は起きた。


 村のすぐ近くの森で裸になった女子小学生が命を落としていたのが発見されたのだ

 すぐに警察が村に来て周辺の警戒に当たることなり、村はパニックとなった。



 ……だが次の日には新たな死体が現れた。

 今度は女子中学生の遺体。遺体の状況は前の死体と同じだったらしい。

 私は怖くて部屋から出られなかった。

 村の人間皆そうだった。特にまだ若い女子学生達は。



 だが現実は非常。

 本日で四人目の被害が出ることとなった。




「さあ本日は出血大サービスだ! 安いよ安いよ!!!」


「おばちゃん今日もやってるの…? 村がこの有り様なのに元気だね…」


「この有り様だからじゃないかな。事件が起きてからずっとやってるから。多分皆に少しでも元気を出してほしいと身銭切ってやってるんだよ」


 おばちゃんは事件が起きてからずっと元気にサービスをしていた。

 村の皆のことを思ってだろう。

 それからすぐ犯人は逮捕され、村には平和が戻った。

 おばちゃんの店はそれからすぐにサービスを停止した。




 それから三日後の事。私の親友が初めてのお付き合いを始めたらしい。

 事件の犯人に襲われそうになった所を助けられて一目惚れしたのだとか。

 彼女の居る所だけ地震が起きてる? と勘違いしそうなほど体を震わせ彼の家に泊まっていく様子を見て、私はニヤニヤと笑っていた。



 そして次の日、私は雑貨屋に買い物をしに来ていた。

 雑貨屋の直ぐ側までつくと、おばちゃんの元気な声が聞こえてくる。



「さあ本日は出血大サービスだ! 安いよ安いよ!!」


「……今日もやってるんだ。珍しいこともあるなあ」


 ここまでスパンが短いのは久々だ。

 やはりこの前の事件の時は特別だったのだろうか。

 私はじゃあお菓子を買おうかなと考えだした時、ふと気づいてしまった。



 私が彼氏と泊まった次の日も、おばちゃんは出血大サービスと言っていた。

 そして昨日は私の親友が…………。



「……………出血」


 その単語が頭をよぎる。

 そういえば殺された人達は皆女性で裸の状態で発見されたと警察が………………。




 次第に顔が青ざめていくのが分かる。ピースが綺麗にハマっていに最悪の答えが顔を出す。


 ……あり得ない。そんなわけない。

 否定したいがしきれない。

 体が徐々に震え、怯える目で私は店の中にいるおばちゃんを見る。




 その時、おばちゃんの体が一瞬だけ化け物だと思った。

 見た目はおばちゃん。だと言うのにナニカ……、ナニカがおかしいと頭の中にグルグルと奇妙な思考が入ってくる。




 私が店の前で固まっているとおばちゃんが私に気づき、目を向けてきた。

 その目が気色悪くて、私を見ているけど私じゃない何かを見ているようで、気づけば私はその場から走り去っていった。




 その日から私はあの雑貨屋に行くことは無かった。

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