第52話 もう一度レベル1
「ホッホッホ。お主また気配が可笑しゅうなっとるの。何?「半神人」とな?どっちつかずじゃのー。まあ、強うなったのなら良いのじゃないか?
ホッホッホ。早よワシも「仙人種」になりたいのー。」
カムイランケ大師匠の物言いが雑だ。
実を言えば、ほとんどの皆んながレベル1で試験を降りてから、グルヴェイグ大師匠と母さんとで修行を続け、最後に俺だけ最高レベルの試験を受け終わるまで、実時間で30分経っていない。
ある種精神世界限定みたいな試験だったから、直接試験を受けていない人間にとっては「ん?もう終わったの」くらいのものだったらしい。
それでも俺は存在値の異なる「半神人」へと進化している。
その結果から考えても、そんなに簡単なものじゃなかったはずだ。
皆んな頼もしいな。
「今から俺の訓練に付き合ってほしい。もう一度、レベル1の試験で体験してもらった世界に、今度は俺が連れて行く。
皆んなには、より完全にレベル1の領域を把握してほしい。戻ったらラファウから直接「神気」運用の手解きを受けてもらうから。」
俺から皆に声をかける。
「ん?何か気配が変わったなトール?何?「半神人」?何だお前もう神様に片足突っ込んだのか?ハッハッハッハ!我が息子は愉快だな!」
父さんがご機嫌だ。
「えーっ!また進化しちゃったのー?!何かピカピカ銀から金になってるしー!えっ?私もそうなるのー?やだーっ!キラキラじゃなーい♡」
ミコさんが嬉しそうだ。女子にはキラキラだよな。うんうん。
「しかしまぁ、このメンツの中にいると私は至極真っ当な一般人に思えるのだが、あれかね、私も至るとピカピカになるのかね?できれば燻銀でお願いしたいのだが・・・」
カンヌさんは金ピカがお気に召さないらしい。
「四の五の言いなさんな。相手はこちらの数も中身も知らんのだ。その隙を目一杯突くには落差が大きければ大きいほど良い。
お主がピカピカ程度、誰も気にしやせん。むしろあれだ。お主見た目が神様っぽいから、空中でも漂って相手ビビらせたらどうじゃ?」
「それ良いわね♡あんたの周りに寄ってきた悪い虫に新しい術ドンドンぶつけてやるわ!あんた派手に飛びなさい!」
グルヴェイグ大師匠と母さんがカンヌさんに容赦が無い。
「とりあえず皆んな問題なさそうだから、もう一回レベル1行くよ!」
「おー!」「オッケー!」「どんと来い!」
「任せなさい!」「お主レベル4まで行きよったんか?」「主も筋肉ばっかり鍛えんと理論をだな」
緊張感ねーなぁ。
まあいっか。
ラファウに目配せしてレベル1の試験を再現してみる。
まずは砂粒の拡大あたりまで。
一気に周囲の景色が変わる。皆んなも問題無いのが分かる。
今度はケイ素原子と酸素原子が形作る四面体の世界へ行く!
一気に景色が変わる。俺自身が世界の有り様を掴んでいるのが分かる!
無限に等しい四面体の世界に再びやって来た。
「改めて見ると面白いもんじゃのう。こりゃあれか?砂粒をさらに細かくするとこういったもんでできとる言う事かの?」
前回より情報量に慣れたカムイランケ大師匠が誰か答えてくれるのをあてにして質問してくる。
「ほう?想像と理解が一致できるようになったのかの?大した進歩じゃないか。次のレベルもいけるのと違うか?」
答えたのは相方?のグルヴェイグ大師匠。
「確かにどうにかなるかもしれんな。グルよ。ちいと後で講義せえ。タイ、カンヌ、ミコ、主らももう一回チャレンジしてみせよ。」
カムイランケ大師匠が前向きだ。父さんとカンヌさん、ミコさんもやってみるかと言う顔をしてお互いを見ている
問題ないな。一気にこのレベルの最深部、量子の領域へ行く!
景色が変わってさらに情報量が上がった世界に降ってきた。
俺は前回よりも素粒子の種類を意識してこの世界に降っている。
心なしか、素粒子が結ぶ像がハッキリしているのは気のせいでは無いだろう。おまけに俺自身が「神気」でこの現象界に影響を与えている。
「なんかさっきよりザワザワせんのう。慣れたのか、今回が捉えやすいのか。両方かの?」
カムイランケ大師匠が好奇心全開で苦手を克服したようだ。この人のポテンシャルがレベル1程度だとは思えなかったからやっぱりなって感じだ。
「お見事ですね。トール様。
それに、お気づきだったかどうか、皆さんには今回は
それでいてその対応力。レベル1でおやめになった方々は、おそらくもうひとレベル、あるいはふたレベル上げられる可能性があります。」
ラファウさんからもお墨付きをいただいた。
意識をゆっくりと、これまでの逆を辿るように元の世界を目指して戻るイメージで力を操る。
無事、元の世界に戻ることができた。
同時に、「神気」を操ることの一端が理解できた。
自分自身の捉え方も少し変わったかもしれない。
これまでは「俺」と「世界」や「他人」という対比があった。自我がコントロールしているのはあくまでも自分の肉体だけで、その肉体で外界と隔てられていたわけだ。
ラファウが俺に皆を引き連れる形で神気運用の初歩をさせた意図が分かった。
「俺」の意識が及ぶ範囲によって、「神気」の力で世界へ影響力を与える範囲が変わる。
「俺」と「世界」や「他人」という対比が無くなる。いや、少し違うか。
「俺」は変わらず在る。なのに同時に世界の在り様を自分ごととして捉えることができる。
個体の感覚器官では不可能な事なのに、恐ろしく高度な並列思考ができてしまう。
俺A、俺B、俺C、が同時に様々な情報を処理できている。そして、その結果を全て収斂して受け止めることができる。
一個体で在るのと同時に、世界の全てと繋がる存在。
正しく「神」だ。
ラファウが言っていた「万能感に酔ってやらかす」感じが理解できる。そして、これほどの力は酔えば我を忘れる。
真剣に己の掌を見つめる俺を見て、ラファウが言う。
「現時点で浮かれるより、新しい力のあまりの万能感に危機感を持つことができる。
それこそが貴方様に全てを賭ける理由ですよ。トール様。
ご心配なく。修行は順調そのものです。」
そうだ。恐れてなどいられない。
一日も早くこの力をの扱いを修めて、歪な思考に囚われた神を糺さなければ。
・・なんて、偉そうな言い方しちゃったな。
前の世界じゃ持てなかった「力」だ。
どうせなら、楽しい世界にしたいじゃない?
そうだ。
そのためにやろう。
気負うな。俺。
世界を救え!勇者戦隊セブンブレイブス!! オカバ @okabasama
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