結局世界は滅亡しなかった昨日(2025年7月5日)、本作は最終回を迎えました。
思いのほか作者の筆が乗ったのか、もともと前後編の予定とされていたこの物語は、全5話の中編になりました。
いち読者として、とても嬉しかったです。
さて、この物語の舞台は、突然の終末宣告で混乱しきった日本。
スーパーの棚は空っぽ、街には人影がなく、SNSには涙と懺悔と猫動画があふれています。
そんな“終末”の世界で、主人公の荒井貫太は「どうせ終わるなら彼女を作って人生最後の恋をしたい」と、あまりにも情けなく、それでいて最高に人間らしい願いを胸に、孤独な戦いを始めます。
彼の行動は滑稽で、読んでいて思わず笑ってしまいますが、同時にその必死さが胸に刺さります。
誰だって、終わりが見えた時には、「自分の人生はこのままでよかったのか」と問い直したくなるでしょう。
そんな貫太の前に現れるのが、アカリという不思議な少女。
彼女は終末の世界でも屈託なく笑い、貫太を「終末彼氏」と呼んで、ぐいぐいと距離を詰めてきます。
二人でゲーセンに行き、クレーンゲームでぬいぐるみを狙い、神社で願掛けをし、観覧車を眺めて他愛もない話をする――。
舞台は確かに“終末”なのに、二人のやりとりはまるで青春デートのよう。
アカリの無邪気さに振り回される貫太の姿がたまりません。
貫太は過去のトラウマや人間不信を抱え、アカリもまた秘密を持っています。
二人が互いの弱さや痛みをさらけ出し、少しずつ心を通わせていく過程は、どこまでもリアルで、どこまでも優しい。
終末SFの非日常、青春ラブコメの甘酸っぱさ、ヒューマンドラマの温かさが絶妙に混ざり合い、「人間って、こんなにバカで、でも愛おしい存在なんだ」とあらためて思わせてくれます。
ギャグのようなやりとりで気を抜かせたかと思えば、ふいに胸を締め付けるような切なさが押し寄せてくる。
読んでいるうちに、貫太やアカリが自分のすぐ隣にいるような気がしてきて、「もし本当に明日世界が終わるとしたら、自分は誰とどんな時間を過ごしたいだろう」と考えさせられる力があります。
終末という極限状況の中で、誰かと心を通わせることの意味。
過去に傷つきながらも、もう一度誰かを信じてみる勇気。
どんなに世界が壊れても、誰かと笑い合える時間があれば、それだけで生きる価値はある――そんなメッセージが、物語の隅々まで染み渡っています。
貫太とアカリが過ごした、終末の街のささやかな日常。
その一つ一つが、かけがえのない『今』を大切にしたいと思わせてくれる、そんな特別な読書体験でした。