麦わら帽子

Rie

─ 昭和のひと夏 —

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カラカラと 自転車のベルが鳴るたび

麦わら帽子が 揺れて笑う


うすい雲 指でなぞったラムネ瓶

青いガラスに 夏がゆれる


蝉のこえ アスファルトに跳ね

影法師は ふたりぶん


夕焼け空に 名を呼ばれたけど

返す声さえ 風にまぎれた


麦わら帽子に 残るぬくもり

そっとひとり 抱きしめて


あの日 云えなかった言葉は

麦わら帽子に しまったまま




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麦わら帽子 Rie @riyeandtea

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