安藤・レイ先生

第5話 安藤・レイ(1)

ちょろちょろ……。


安藤先生がティーカップにお茶を注いでくれる間、私はそわそわと落ち着かずに、何度も周囲を見回した。


まるで勇者のように登場してくれたおかげで、私はあのヤクザに連れていかれずに済んだ。

……けれど代わりに、何に使われるのかも分からない謎の建物に連れてこられてしまったのだ。


どう見ても桁違いに広くて、クラシカルで重厚な内装。


正面のソファには、例の血管美人ヤクザが不機嫌そうな顔で座っていて、まるで値踏みするように私を見てくる。


「アンドレイ。お前の知り合いか?」


このヤロー……安藤先生より若く見えるくせに、呼び捨てにしてるし!

私のイライラ度はどんどん上がっているのに、当の安藤先生は慣れた様子で動じていない。


――っていうか、名前……アンドレイ?


確かに病院で見た名札には『安藤・レイ』って書いてあったはずだけど……。

戸惑う私に、安藤先生が優しい声で語りかけた。


「うん……まずは自己紹介からしましょうか。私の名前はアンドレイ・フェンボルト。この帝国での肩書きは『補佐官」です。以前、次元の歪みで日本に飛ばされていたのですが、最近こちらに戻ってきたばかりです」


そう言って微笑む安藤先生――いや、アンドレイ。


……あれ? そういえば今までバタバタしていて気づかなかったけど……髪、茶色だったっけ?

そして目の色は――


「茶髪に、緑の瞳……?」


「やっと気づきましたか。目立たないように髪は黒く染めて、コンタクトレンズもずっと付けてましたから。病院の皆さんも、特に疑っていなかったようですし」


そういえば、確かに整った顔立ちで、少しハーフっぽい印象だったけど……

まさか全部、染めとカラコン、しかも身分まで偽ってたなんて!


呆然とする私に、アンドレイ先生の説明はさらに続いていった――。

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ただのナースなのに、血管が美しい皇帝に婚約者にされました キイロユイ @kiyui0729

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