第4話 幼馴染兼恋人2人との同棲が始まった件④
ショッピングモールから帰ってきた俺たちはそれぞれ残っていた引っ越しの片付けを行った。
二人よりも先に片付けが終わった俺は何か手伝うことがないかと、まず美尋の部屋に向かった。
「美尋。片付け終わったけど何か手伝うことあるか?」
「海星君。早いですね。そういうことなら手伝ってもらってもいいですか?」
「おけ」
美尋は自分の部屋の片づけを後回しにしてリビングとキッチンの片付けを先にしてくれていたので、自分の部屋の片付けがあまり終わっていないみたいだった。
「何を手伝えばいい?」
「それでは、そこのダンボールに入ってるCDを並べてもらえませんか?」
「了解。ちなみに並べ方とかあるか?」
「ダンボールの中に入っている通りに並べてくれれば大丈夫です」
「おけ」
俺は指示された通りにCDを棚に並べ始めた。
CDの入ったダンボール箱は全部で三箱。
一つのダンボール箱に百枚くらいはCDが入っていそうだった。
美尋がこんなにもCDを持っていることは初めて知った。
十年来の付き合いになるのにまだまだ知らないことがあるんだなと俺はCDを並べながら思った。
そして、きっとこれからも美尋の、美尋だけでなく環奈も、二人の知らないことをたくさん知っていくことになるんだろうな。
二人のどんな一面でも全部受け止めて、全部を愛する覚悟が俺にはある。
「美尋。こんな感じで大丈夫か?」
「はい。バッチリです」
とりあえず一つ目のダンボール箱に入ったCDを並べ終えたところで、俺は美尋に確認をした。
並べ方は大丈夫なようなので、俺は残りの二つのダンボール箱の中に這い合ったCDも並べていくことにした。
俺がCDを並べている間、美尋は洋服類をクローゼットにしまっていた。
☆☆☆
「海星君。ありがとうございました。手伝っていただいたおかげで早く終わりました」
「どういたしまして」
「あの、海星君」
「ん?」
「せっかくですので一曲だけ聞いてくれませんか?」
「弾いてくれるのか?」
「はい」
「じゃあ、聞かせてもらおうかな」
「はい!」
美尋の部屋の右隅の方に真っ白なグランドピアノが置かれている。
あのグランドピアノは世界に一つだけしかなく美尋が特注したものだ。
美尋は子供の頃からピアノを弾いていて、その腕前は世界大会などで優勝するほどで、最近ではいろんなアーティストに楽曲を提供したりしている。
美尋は椅子に座って、鍵盤の蓋を開けた。
「そういえば、美尋のピアノを生で聞くのは久しぶりかもな。去年の俺の誕生日の時に弾いてくれた以来か?」
「そうですね」
なぜか俺と環奈の誕生日は毎年、美尋の家で盛大に祝われている。
俺たちの両親同士が仲が良いというのが一番大きな理由だろう。
両親同士が仲良いから、俺は美尋と環奈と出会うことができた。
そうでなければ、こんな俺が美尋と環奈と出会うことはなかっただろうし、ましてや恋人になんてなることはなかっただろう。
なんてことを二人に言ったら、また怒られるんだろうな。
「あの、どうかしましたか?」
「何が?」
「なんだか嬉しそうな顔をされているので」
「俺、そんな顔してたか?」
「はい」
「俺は幸せ者だなって思っただけ」
「なんですかそれ」
美尋はクスクスと笑った。
「それを言ったら私も幸せ者ですよ。こうして海星君と一緒にいることができているのですから」
「本当か?」
「疑うのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「仕方ないですね」
椅子から立ち上がった美尋は俺に近づいてくると、そのままキスをしてきた。
「こ、これでもまだ疑いますか?」
これでまだ疑っていたら美尋のことを信じていないのと同じだ。
もちろん信じていないわけではなかったけど。
俺は美尋のことを抱き寄せた。
「疑うわけないだろ」
「もしまた疑ったら許しませんからね」
美尋は頬を膨らませると俺のことを上目遣いで見てきた。
俺はそんな美尋の頭を優しく撫でた。
「もう絶対に疑わないから安心してくれ」
「その言葉を信じましょう」
「それで、何の曲を聞かせてくれるんだ?」
「何が聞きたいですか?」
「じゃあ、あの曲がいいかな」
俺は美尋の作った曲の中で一番好きな曲をリクエストした。
もちろん美尋の作った曲は全部好きだけど、その中でもこの曲がダントツで好きだ。
美尋はピアノの前に戻り椅子に座ると鍵盤に手を添えた。
そして、美尋はピアノを弾き始めた。
この曲は中学一年生の誕生日の時に美尋が俺のために作ってくれたもので、世の中には出回っていない。
(本当に幸せだな)
俺は美尋の弾く美しいピアノの旋律を一音残らず聞き逃さないようにしっかりと耳を傾けた。
☆☆☆
幼馴染二人と恋人になった件(仮) 夜空 星龍 @kugaryuu
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