第3話 幼馴染兼恋人2人との同棲が始まった件③
「ふふ〜ん! 私の勝ち〜!」
「くそっ」
環奈が誇らしげな顔をしているのを見て分かる通り、俺は環奈に負けた。
正直、こんなに誇らしげな顔をされるのがムカつくくらいの接戦だった。
だから余計に悔しい。
「てことで、どっちがピザ代払うか決めてね~!」
「負けませんからね。海星君」
「さっきは応援してもらったけど、ここからは敵同士だな。俺も負けるつもりはないから」
せっかく美尋が応援してくれたのに勝てなかったのも悔しい。
しかし、ここからは敵同士だ。
勝負をするからには真剣勝負。
さっき応援されからからといって、手を抜くつもりは一切なかった。
美尋が勝負事で手を抜かれることを嫌うのを知っているからなおさらだ。
「それじゃあ、二人とも用意はいい?」
「はい」
「大丈夫だ」
「じゃあ、ラストゲームスタート!」
環奈の合図で俺と美尋の対戦が始まった。
序盤はお互い様子見といった感じだった。
ピザ代を払うことは正直どうでもいいが、美尋に負けたくなかった。
環奈にも負けて美尋にも負けたとなると、俺が三人の中で最弱ということになってしまう。
それだけは何としても避けたいところだ。
「海星君。なかなかやりますね」
「美尋もな」
「でも、絶対に負けませんから」
美尋が怒涛の攻撃を仕掛けてきた。
俺はそれを何とか体力ギリギリのところで耐え反撃にでた。
しかし、俺の反撃は美尋に完璧に防がれてしまい、そのまま反撃を受けて第一ラウンドは美尋に取られてしまった。
「くそ~。負けたか」
「ふふ、第一ラウンドは私の勝ちですね」
「次勝って同点にするから」
「次勝つのも私ですよ」
一ラウンド先制した美尋は余裕そうな笑みを俺に向けてきた。
何としても次のラウンドを取って同点にしないと俺の負けが決まってしまう。
「美尋やるね~。その調子で次のラウンドも取っちゃえ!」
「はい。そのつもりです」
☆☆☆
俺と美尋の対戦が終わって、すぐにピザが到着した。
ピザ代を払ったのは俺だった。
「海星、ごち~!」
「海星君。ありがとうございます」
「次は絶対に負けないからな。さ、食べようぜ」
「食べよ~! お腹ペコペコ~!」
「そうですね。食べましょう」
俺たちはいただきますをして、ピザを食べ始めた。
それぞれ別々のピザを頼んだが、一枚を一人で食べるというわけではなく、それぞれが頼んだピザをシェアして食べることになった。
「てか、これから毎日こうして一緒にご飯食べれるとか最高過ぎない?」
「そうですね」
「そうだな」
「家事の役割分担とか決める?」
「決めといた方がいいか?」
「ん~決めといた方が楽だとは思うけど、私は暇な人が洗濯とかお風呂掃除とかやるでも全然いいけどね~」
「料理は私が作りますね。それ以外も余裕があればやりますよ」
「みーちゃんの手料理大好きだから嬉しい! 私も余裕がある時は家事やるよ~」
「俺も言ってくれればやるから、やってほしいことは遠慮なく言ってくれ」
「じゃあ、とりあえずは手の空いてる人が家事をやるってことでいこう~!」
「はい」
「おけ」
こういう話をすると本当にこれから二人と一緒に暮らすんだということを実感する。
できるだけ二人に負担をかけないように俺にできることはどんどん積極的に行おうと思った。
「ねぇねぇ、ピザ食べ終わったらさ、お揃いのコップとか箸を買いに行かない?」
「いいですね。買いに行きましょう」
「じゃあ、決まり! ピザ食べ終わったら買いに行こう~!」
ということで、俺たちはピザを食べ終わったらショッピングモールに行くことが決定した。
☆☆☆
ピザを食べ終えた俺たちはショッピングモールにやって来ていた。
「何から買う~?」
「とりあえず、雑貨屋に向かったらいいんじゃないか?」
「そうですね。雑貨屋さんに行って、お箸とかコップを探しましょう」
「そうしよ~」
ここのショッピングモールは市内で一番大きく、フロアが十階もある。
雑貨屋は三階にあるので、俺たちはエスカレーターで三階に向かった。
「このお箸とかどうですか?」
「え~めっちゃ可愛い~!」
「可愛いですよね。ちょうど色も三色あるのでいいと思うのですけど、海星君はどうですか?」
「いいんじゃないか」
「では、お箸はこれにしましょう」
俺が黒色で、美尋が白色で、環奈が赤色。
美尋が選んだのは鯉の絵が描かれた箸だった。
「次はコップを見に行きましょうか」
箸を買い物カゴに入れ、俺たちはコップが売っているコーナーに向かった。
☆☆☆
お揃いのコップを買った後、お揃いの茶碗も買った俺たちはショッピングモール内をブラブラと散策していた。
「悪い。ちょっとトイレに行って来てもいいか?」
「いいよ~。そこの椅子に座って待っとくね~」
「すぐ戻ってくるからな」
俺は急いでトイレに向かった。
なぜ急ぐ必要があるかと言うと、理由は簡単だ。
漏れそうだからではなく、あの二人の側から離れるほぼ百パーセントの確率でナンパをされるからだ。
これまで何度あの二人がナンパをされているのを阻止したことか。
その数は両手両足の指の数では足りないくらいだ。
そのくらい美尋は可愛く、環奈は美人なのだ。
俺は急いで用を済ませて、二人の元に戻った。
「ねぇ、君たち二人? よかったらお兄さんたちと一緒に遊ばない?」
二人の元に戻ると、案の定、いかにもチャラそうな見た目をしている大学生風情の男二人にナンパをされていた。
「興味ないで~す。それに彼氏と一緒に来てるんで遊びません~」
「彼氏なんてどこにもいないじゃんか~? どうせ、嘘なんでしょ?」
「嘘じゃないですよ~。てか、後ろにいますよ~」
「えっ……」
環奈の言葉にこっちを振り返った大学生風情の男二人(金髪と茶髪)は驚いた顔で俺のことを見た。
「あの、俺の彼女たちに何か用ですか?」
「こいつが彼氏?」
「マジかよ。釣り合ってなさすぎだろ」
俺のことを見た大学生風情の男二人はケラケラと腹を抱えて笑った。
そんなことは俺が一番よく分かっているし、いつもそう言われきた。
だけど、こんな平凡な俺でも好きだと二人は言ってくれた。
だから、二人に釣り合うような男になろうと、二人の隣に並んでも恥ずかしくないような男になるために頑張ろうと心に決めていた。
「なぁ、こんな男より俺たちの方がよくね? こんな男のことなんて捨てて、俺たちと付き合おうぜ」
金髪の方の男がそう言った瞬間、環奈は椅子から立ち上がると大学生風情の男二人の間を素通りして俺の腕に抱き着いてきた。
「あんたたちバカなの? 鏡見て自分の顔見たら? あんたたちより、海星の方が何億倍もカッコいいから」
環奈に続いて、美尋も椅子から立ち上がると環奈と同じように大学生風情の男二人の間を素通りして俺の腕に抱き着いてきた。
「環奈ちゃん。億では足りませんよ。その程度では海星君に失礼です」
「あはは、たしかに~。てことだから、あんたたちと付き合うなんて絶対にありえないから。行こ。海星」
「行きましょう。海星君」
美尋と環奈に腕を引っ張られ、俺はその場を後にした。
☆☆☆
「ごめんな。二人とも」
「海星が謝ることじゃないって。ナンパなんていつものことだし」
「そうですよ。海星君が謝ることじゃないです」
「俺、ちゃんと二人に釣り合うような男になれるように頑張るな」
「何言ってんのよ。釣り合う釣り合わないとかどうでもいいの。私たちが好きなのはそのままの海星なんだから、背伸びなんてしなくていいの」
「環奈ちゃんの言う通りです。海星君は今のままで十分にカッコいいですよ」
「ありがとう。二人とも」
二人はこう言ってくれるけど、二人の隣にいるなら、二人の隣にいても恥ずかしくない男にならないといけない。
二人に守られるようじゃまだまだだ。
「さ、気持ち切り替えて買い物の続きしよ~!」
「そうですね。他に何買いますか?」
それから俺たちはいくつかのお揃いの日用品を購入して、ショッピングモールを後にした。
☆☆☆
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