第2話 再開

【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 11:23

自宅


「ハッッ!」


最悪の気分で目が覚める

どうやら気持ち悪い夢を見ていたみたいだ。


「やけにリアルな夢だったな」


電車から急に学校に飛ばされ、謎の少女と出会い、急に死ぬ夢。

本当にあれは夢だったのか?

まだ背中に痛みを感じる気がする...


「ピピピ」


スマホのアラームが鳴り響く、どうやら気がつければ、時刻は11時27分になっていたようだ。

そう、つまり遅刻


「またかよ」


夢と同じ状況で思わずそう呟く。


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【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 12:00

電車内


珍しく空いている車内。

暇なので、スマホの中の写真フォルダを漁る。


小学生の時の運動会の写真、中学生の時の部活のコンクールの写真、高校生の時の友達と撮った青春の塊みたいな写真。

すべて大切な思い出だったのだろう。

だが今の俺にはそれらの記憶が無い。


いつからなのか、気がつけば大切だったはずの青春がすべて消えめていたのだ。

自分がどんな人間だったのか、それすらわからなくなるのは正直、死ぬよりも怖かった。


だが今日でそんな不安もぶっ飛ぶかも知れない。

なぜなら俺の同級生だった者に話を聞きに行くからだ。


その人とは情報収集のために見ていた出身校の掲示板で知り合った。

話を聞いてみると俺と同じように記憶が消えており、お互い会って話そうということになった。


そして遅刻しそうな今に至るのだ。


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【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 12:30

秋葉原駅


電車から降り、駅の中を進んで行く。

人混みの中をくぐり抜け、待ち合わせの場所である駅前のゲームセンターにたどり着いた


「ごめん。今到着した。」


謝罪の連絡をして、既に彼女が来ていないか周りを見る。

すると気になる看板があった。

「機械人形(アンドロイドドール)30%off」


機械人形、それは最近流行りの高機能AIを搭載した家事や仕事、車の運転まで出来るほぼ人間の見た目をしたロボットだ。


「あとで買いに行こうかな...」


「あなたが春咲 夕兎?」


背後から声が聞こえた。

振り向くとそこには夢の中で見た少女が居た。

でも目の色は赤じゃないし眼帯をつけていたりはしない

だがそれでもあまりにそっくりだった。


「うん」


「久しぶりで良いのかな?私は白川 有再(しらかわ ありさ)」


「ああ、久しぶり」


少し気まずそうにそう返信する。


「単刀直入に聞くが、俺の学生時代の記憶はなぜ消えたんだ?」


「明解な理由まだそれは分かっていない。

でも手がかりとなる物は見つけた。

実は私も1ヶ月前までは記憶が消えていたんだ。

今も完全には戻っていない。君に関する記憶もほとんど無いに等しい。」


記憶の手がかり。

それは見せられる物ってことは物質として存在している物なのか?



「その手がかりってのは?」


「ついてきて。見せるから」


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【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 13:03

秋葉原


話題も見つからず、俺たちはただ淡々と歩いていた。


「ちょっとまってて」


有再、突然歩みを止める。

彼女が向いている方を見てみるとそこには少し寂れた建物があった。


壁にはゲームセンターと書いてたので数年前まではゲームセンターだったのだろう。

だが現在は店は開いておらず、シャッターは閉まっている。


「ここが目的地?」


「そう。他の人がいる場所だと見せにくいからね」


話ながら彼女はシャッターを開け、中に入っていく。

俺もそれに続き、中に入ってみると案外キレイで少し驚いた。


内装はゲームセンターっぽくは無く、秘密基地のようになっている。

壁には恐らくモデルガンであろう銃が飾っていて、その横にはかなり古いバイクが置かれている。


「これns-1か?」


ns-1、かなり古いホンダの2ストで50ccのスポーツ仕様なイカれたバイクだ。


「よく知ってるね。

学生時代の友人が好きだったんだ。

その彼の事もほとんど覚えてないけどね」


少し、悲しそうな目で有再は語った。

記憶...それは生きた記録であり、人格を構成する第二の心臓。

それがなければ俺は死んでいるのと同じだと思う。


「ところで...本題の話なんだけど。

説明するよりたぶんこっちの方が早いかな」


有再はカバンからカッターナイフを取り出す。


「え?」


少し不穏な何かを感じた

だがもう遅い。

気がつけば、彼女は自らの腕を切りつけていた。

かなり強く切ったのか血が飛び散り、少しずつ床に垂れていく。


「大丈夫だよ。ちゃんと見てて」


その言葉の通り、俺は彼女の腕を見る。

ある程度血が出ており、かなり痛そうな腕。

だが様子がなんだか変だ。


「...治った?」


有再の腕は並みのスピードとは比べ物にならないくらい急速に治癒していった。

次に腕を見る頃にはもう完治と言っても良いくらい腕は治っていた。


「これが私の見せたかった物。

いろいろ試して見たけどたぶん不死に近い物だと思う」


不死の力。それが本当ならとんでもない方向性へ話が変わり初めていると思う。

消えた記憶に今朝の夢、そして不死の力。

本当にラノベの世界へ迷いこんでしまったのだろうか...それともこれは夢なのだろうか。


「今の力が私たちの記憶の消失の手がかり」


「夢みたいだ」


いや夢でも良い

ちょうど日常に飽きていたところだ。




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アナザーエンド ソルティ @soruteyi

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