アナザーエンド

ソルティ

第1話 スタートラインへの帰還

【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 11:27

自宅


「ピピピ」


スマホのアラームの音が微かに聞こえてくる。

その音は寝起きのぼんやりとした頭にものすごく不快感を与える。


そして呟く


「うるせえ」


スマホを叩くようにタッチし、音を止める。

眠たい目を擦りながら時計を見ると現在は11:27

本来起きなければいけなかった時間は11時ちょうど。

つまり27分寝坊したことになる


「やばっ」


少し、早足でクローゼットへ向かい今日着る服を探す。


「くっそ、あんま良い服無いな」


こんな時に限って普通の服は脱ぎっぱなしですそのまま

クローゼットの中にあったのは夏に着るには暑すぎるパーカーやどこかの黒の剣士が着てそうな服などの厨二病っぽい服だけだった。


普段引きこもってるせいで服なんてまったく気にしてなかった。

己の社会不適合者レベルを再認識する。


「もう着る服も無いし、もういつも着てるジャージで...」


いや!ダメだ!

ここを妥協してしまえば大切な何かを失う気がするっ!だが、着る服など...


-------


【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 12:00

電車内


とりあえずマシな服(くそ暑いパーカー)に着替えて電車に乗っているが服が着こなせてるかがさっきから心配だ。

何度も手鏡で確認し、ついでに寝癖を整える。


一度引きこもってしまうと、人に会いに行くのがこんなにも難しい物になるとは思わなかった。


これから会いに行くのは俺の人生を左右するかも知れない人物。

俺の失った青春を知る唯一の手がかりだ。


「■■■■」


寝癖を弄っていると、突如ノイズのような物が聞こえた

耳からというより、頭に直接響くかのようにその音は聞こえた。


「なんだこれ」


とりあえず聞こえなかったふりをしてさりげなく周りを見る。

他の人間には聞こえてないいないみたいだ


「く■し■し■■い■れか■す■てよ」


さっきよりもより鮮明に音が聞こえる。

これは誰かの声か?

まだノイズもあり、ハッキリとはわからないが10代ぐらいの若い女性のような声だ。


辺りを確認するが、それらしい声の主は見つからない。

これは幻聴なのか...?


「■■■■」


いや、そんなことは無い

この不快感を得るような音は夢なんかじゃない。

とにかく、まずは声の主を探そう。

俺の読んでたラノベの主人公ならそうしたはずだ


席を立ち上がり、横の車両へと移動する。

幸いにも時間帯のお陰か、かなり車内は空いているので自由に移動ができる。


「■■■助けてもう疲れたよ」


どんどん声がはっきり聞こえるようになっていく。

これは近いということか?


俺は気がつければ電車の中という事を忘れてただ、一生懸命に声に向かい、走っていた

なぜかはわからない、ただそうした方がいいと直感で感じた。


「□□□□□」


さっきとは少し違うノイズが聞こえてくる。

視界は真っ白になり、少し目の前が見えなくなった。


「うわっ!」


-------


【春咲 夕兎(はるさき ゆうと)】

2024年7月28日 ■■:■■

学校?


「ここは...どこだ?」


さっきまで俺は電車の中で声の主を探していたはずだ。

だが、現在俺は学校の教室のような場所にいる。


ラノベの読みすぎで変な夢でも見てるんじゃないかと思う。


「ここは一応現実...まあ曖昧だけど」


一人の少女が教室に入ってくる。

さっきの声とはまったく声が違うので、探していた人物では無いみたいだ。


「まさか、関わってくるとは思わなかった。

記憶は...問題ないみたいだね」


その少女は赤色の瞳、白髪、左目には眼帯、そしてどこかの学校の制服を着ていた。

まるで厨二病が好きな属性を合体させたみたいだ。


「記憶?」


「ああ、こっちの話だから気にしないで。

ところで、君どうやってここに来たの?」


「えっと電車の中で変な声が聞こえて、それを追いかけたら、気がつけばここに...」


「普通来れないはずなんだけどな..

とりあえず私の後ろに隠れてて...危ないから」


言い終わると、少女はポケットから四角の箱を取り出した。


「プログレッシブ!」


そう呪文のように唱えると箱はどんどん形を変え、棒状の物になっていく...

やがてそれは剣のような形に変わった。


「一体何者な..」


言葉が途中で止まる。

扉が勢い良く開き、何かが俺たちの方へ飛び込んできたからだ。


飛び込んで来たのは学ランを着た人、だが顔はモザイクが掛かっているかのようにハッキリと見えない。

手にはカッターを持っていて、雰囲気からして普通の人間ではない。


「■■■■」


奴は何か呟きながら少女をカッターで刺そうした。

だが華麗にその攻撃を避け、少女はアクション映画並みの綺麗な回し蹴りをした。


「■■■■■」


敵は悶え苦しみ、そして一瞬にして砂のようになり消えていった。

目の前で人型の物が苦しみながら消えていく、あれが人でなかったとしても、それを見れば恐怖が頭の中を支配する。


「あれは...何者なんだ?」


恐怖で上手く動かない口でそう質問する。


「あれは人ではない、実態もない。

まあ誰かの妄想を具現化した物だとでも思って」


妄想の具現化?

信じられない話だが、あれを見れば事実だと認めるしかない。


「妄想って誰の妄想なんだ?そしてここはどこなんだ?」


「ここは...」


少女が話そうとした時、背中に痛みを感じた。

何か鋭い物で刺されたかのような痛みだ。


「ぁぁぁあ!!」


痛みが増していく。

ドンドン鋭い痛みが俺を苦しめる。

腹の方を見ると剣のような物が背中から貫通していた。


「ゆうとくん!!」


血が滝のように出ていく、意識が遠退いていく。

俺は死ぬのか...?

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