とぐろ

Rie

— ぬるり —

---


畳に膝を落とす音さえ

ふたりの間では 前戯になる


 


するり

粘膜のように

夜が わたしの素肌を這いまわる


 


蛇のような舌が

うなじを這い

背骨をつたい

吐息ひとつで

髪さえ淫らに崩れる


 


わたしは あなたの執拗な指先に

爪を立て

遊ぶふりで

欲の芯を

からかうように引く


 


絡み合うたびに

わたしの内に棲む

密やかな蕾の奥が

ぬるりと開いてゆく


 


泡立つような疼きが

腰の奥を

じくじくと撫であげ

とぐろを巻いて

快楽を孕む


 


濡れた畳が

淫らな熱を

しずかに吸い上げ

影までが

肌のように

重なり合う


 


唇で

理性を封じられ

首すじには

舐め溶かされた嘘だけが残る


 


じっとりと、肌に粘る気配に

わたしはもう

骨と声だけになっていた


 


夜が明けるのが おそろしくて

このとぐろのなかで

溶かされながら

果てのぬめり




巻かれ、

 締められ、

  溶かされ、

   果てへ——

    ——ぬるり



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とぐろ Rie @riyeandtea

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