君へ

安部 真夜

君へ

 ”あの塔が雲に飲み込まれると、雨が降ってくるんだよ?”

 なんて言ってた君。


 …本当だ、雨が降ってきた。

 あの時は不思議だなって思っていた。

 

 雨音の中 1人歩く。


 雨粒を信号の赤がルビィに変える。

 いつかは 君にあげたかった。

 ルビィは君の誕生石だったね。



 “雨が降るとね、木々や草が優しく手当てされてるみたい”

 そんなことも言っていた君。

 その時は、よく分かってなかった。


 …本当だ、木々が生き生きしている。

 綺麗だ、と思えた。


 雨音が優しい音を奏でる。

 傘にぽつ、ぽつ。と落ち。


 雨の雫は、あの時に君が言った言葉。

 ひとつひとつ、大事にすればよかった。

 

 雨粒が落ちる音のメロディー。

 いつかは 君と聞きたかった。



 今は、どこにいるかわからない君と。

 今は、もう戻らないだろう…君と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君へ 安部 真夜 @abe-maya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説