雨宿り

Rie

― 土砂降りのち、恋 ―

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コートの裾から 水が滴る

声もかけずに 彼がわたしを引き寄せた


 


ホテルの鍵が 重たく鳴る

外は土砂降り

それでも この部屋の方が ずっと湿ってる


 


濡れた髪をほどいて

うなじを ひと舐めされただけで

芯から崩れそうになる



―――奥さんは?



その問いは 唇で塞がれた

言葉より先に 熱が からだを染める


 


シーツの波に 何度もさらわれて

雨音より激しい吐息に 溺れてゆく


 


果てる夜を終えたそのあとも

抱きしめた腕が ゆるまない


神さえ目を背けた夜

彼は わたしの欲望そのものだった



外は土砂降り

肌からあなたが消えてゆく



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雨宿り Rie @riyeandtea

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