第13話 誰かこのロボットの説明書をくれ

 〈ガンフィスト〉のコックピットの中は意外とシンプルだった。


「ノリで乗ってみたけど……これでどうやって戦えばいいんだ……」


 まず人間が座るクッション付きの椅子がある。それはいい。二足歩行のスーパーロボットの操縦座席なのだ。歩くときに衝撃が襲うだろう。その衝撃を吸収するのに椅子は最適だ。

 だが、問題は操縦桿そうじゅうかんだった。

 Cの字型のスライド式のレールの両端に、レバー付きのスティックが付いている。それだけ。

 一応足元には車のように両足の先にフットペダルが付いているのだが、それだけ。二祖歩行のロボットを操縦するにはあまりにも操作装置が少ない。


 それに———、


「これって動かす時にダサくないか……?」


 C型の、それぞれの文字の先端に当たる部分にある操縦桿を俺は今、握りしめている。Cの字の中心に座席が配置されて座っている形で、その足先にはフットペダルが添えられている。

 つまりこれは、俺を折り曲げて動かす必要があると言う事だ。

 つまりこれは、俺がガションガションと子供のようにレバーとペダルをスライドさせたり、押し込んだりして動かす必要があると言う事だ。


「ダサくね?」

「ダサくないです」


 俺の背後にはアリア・アテリアルが立っていた。


「つーか、何でお前はロボットのコックピットの中で立っているんだ! アブねぇだろ⁉」

「危なくないです。このコックピットの中は〝衝撃吸収ショックアブソーバ特殊ジェル〟に包まれているので、外の衝撃を95%緩和してくれます」

「何だその中途半端な吸収率……どうせなら100%吸収してくれよ……」

「それはそれでどれだけのダメージが機体に与えられたか体感できませんので」

「そうかよ。それにしても……どうやって〝あいつら〟を倒せばいいんだ?」


 前面に広がる巨大モニターに目をやる。

 〈ガンフィスト〉のモニターは楕円型に湾曲したもので丁度人間がそれを見ている時に自らの視界と同じサイズになるように設計されている。なのでまるで自らが巨大ロボットになったかのように体感できる。

 そのモニターの上部に浮遊し続けている宇宙人の航空機があった。


「相手、飛んでいるんだけど……この〈ガンフィスト〉に武器はないのか?」

「あります」

「あるのか⁉ ビームライフルとかボディ内蔵のバルカンとかそういう武器が〈ガンフィスト〉にあるのか?」

「あります」

「何だ⁉ それは、もったいぶるなよ!」

「目からビームです」

「は?」

「目から発する、高温熱線攻撃です」

「……ダサ」

「ダサくないです」


 終始、アリアは鉄面皮で真面目そうな顔を崩さなかった。


「こりゃ俺がこの〈ガンフィスト〉に乗ってるなんて人には言えないな……それで、どうやって撃つんだよ。その目からビームは。さっきの亜空間突入みたいにこのスティックについているレバーを引くのか?」


 〈ガンフィスト〉の操縦桿にはレバーが付いている。

 それを引くことで先ほどは〈ガンフィスト〉の両腕についている粒子加速器が回転し、超質量粒子と負の質量粒子を混ぜ込んだ、通称〝亜空間粒子〟という粒子を足元に散布することで亜空間へのゲートを生成。その後、亜空間に突入している間に「で、これどうやって行きたい目的地に出ればいいんだ?」「音声入力」「恥ずかし……」というやり取りがあった後に「新宿都庁前!」と高らかに宣言したことで、亜空間の出口は新宿の街中に出ることができた。

 ただ少し、座標にずれがあったようで都庁前ではなく実際に出てきたのはコクーンタワ―前で。そこでは丁度敵の爆撃機がビーム兵器を地上の人間に撃つところだったらしく、それを〈ガンフィスト〉の手で受け止めることができた。

 それは非常にタイミングが良くて都合が良いことだった。

 そして再び都合の良い長距離攻撃武器をどうやって発射すればいいのかと、アリアに尋ねる———つーかまず説明書をくれ説明書を。何で〝私がマニュアルです〟みたいな面をして隣に立っているんだよ。アリア・アテリアル。


「叫んでください」


「……は?」

「技名を叫ぶのです。ハル様。それで〈ガンフィスト〉の武器は起動します。航空迎撃兵器の名称は【ガンレーザー】です。それを高らかに叫んだら〈ガンフィスト〉の頭部カメラアイが光線収束モードに切り替わり、熱線を発することができます。さあ! ハル様、高らかに【ガンレーザー】と、」


「嫌だああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」


 そんなダサい真似、絶対にしたくはなかった。

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35歳でスーパーロボットに乗るのはみっともないですか? あおきりょうま @hardness10

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