冷蔵庫

おる

冷蔵庫

「……本日も記録的な暑さとなるでしょう」

画面の向こうでは真っ黒なスーツを着た三十路のアナウンサーが話していた。彼はこの外気温の中で汗をかきながらこれからの天気予報を話している。聞き流しつつ万年床になっている布団からのそのそと動きだす。


この部屋の中は常に24℃程度に保つようにしている。いつだったか見たテレビ番組で新生児にちょうど良い気温は24℃だと言っていたからだ。それから何となく24℃に保つようにしている。もちろん私に子などいない。そういえば、今私が飼育しているモノは24℃くらいが最も快適に過ごせるらしい。そんなことを考えながらベッドの端に座り、残っていたインスタントのアイスコーヒーを呷る。


ベランダにでて太陽光を浴び、発電しつつ外を見渡す。燦然と、憎いくらいに太陽が照っている。蝉の声がしない。連日35℃を超える今の日本の夏では神様もわざわざ蝉の螺子を巻こうとは思えなかったのだろう。


彼らは『夏』のひとときをその音で彩る。彼らのいない夏はやはり1色足りない。その分を埋め合わせるためか、はたまた太陽に対して物申したいのか、最近はコンクリートが鳴いている。やはり彼等よりは未熟だが、光るものはあるかもしれないと思う。


部屋へと戻る。部屋の温度を一定にしようと躍起になっている冷気の膜が焦ったように私を包む。私はとれたての電気をふたつに分ける。もちろん私とモノで分けるためだ。電気の調理法は沢山あるがとれたてならやはりそのままがいい。とれたての電気はほんのり甘く、ほんのり焦げた匂いがし、そのまま食べても美味しいことに疑いの余地はないが、ここは三温糖をひとつまみかけてやる。こうすることでより甘みが引き立つし、何よりコーヒーに合う。


モノは当然コーヒーを飲まないので今日もまた自分の分だけ淹れる。一旦お湯を沸かし、その間にコーヒーカップにインスタントコーヒーの粉をスプーン一杯分入れる。ここでクリープや砂糖を入れておいてもいいのだが今日はとれたての電気がある。コーヒーはブラックと洒落こもう。コーヒー粉が入ったコーヒーカップに少しだけ水を入れ予めコーヒー粉を溶いておく。ここが最終的なコーヒーの質を分ける。そんなこんなしているとお湯が沸いたので先程コーヒー粉を溶いたコーヒーカップに優しく注ぎ、泡立たないよう優しく、それでいてしっかりと混ぜる。仕上げに冷凍庫からこの間冷凍保存しておいた冬を1口大の大きさの一ブロックだけ取りだしてコーヒーカップに入れる。冬を二ブロック入れたり大きな一つのブロックで入れたりすると冷たすぎてコーヒーの味が分からなくなるから欲張らないことが大事。


これを飲んだら夏をとりにいこう。ちょうど冷凍庫にも空きがあるし、今度ラーメンを作るときに使いたいしね。

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冷蔵庫 おる @orukaikou

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