プライベート・エム・シー

要想健琉夫

            

 Kはもう書けなくなっていた。彼らに捧げるの同人作品をKは書けなくなっていた。原因はK自身もいまいち見えないまま、書き手を動かすことは出来るが生まれるのは稚拙でいて納得のいかない、いけ好かない文章のみ、Kは書けなくなっていた。

 Kが彼の同人作品を作り始めたのは友人関係から生じた劇からだった。Kは昔から自分の中で脚本を作り上げるのが好きだった、力量はどうであれ好きだった。そうしてその脚本を作り上げる力を買って出たKが彼ら友人と脚本を基に演劇を繰り広げた。脚本をKが書き脚本が出来上がるとK自身も演者として、友人達と共に演劇を繰り広げる。それがKにとっても恐らく彼ら友人にとっても有意義で楽しい時間であった。

 しかしそんな言わば劇作家のKは劇の脚本を書けなくなっていた。Kにとってこれは死活問題であった。Kは自らの脚本作成技術を自らの芸術と表現とに落とし込んだ。Kは自分が書いた脚本を巷にばら撒いた、大した評価はされないにしろKは自らの芸術に表現に忠実になり脚本を書き続けた。

 そんなKは友人の中で交わされていた同人作品の脚本を何時の間にか書けなくなっていた。最近は友人達と劇を執り行う機会もめっきりと減ってKは一定の寂しさと侘しさとを抱いていた。久しぶりに彼らとの劇の脚本を書こうとしても書き手が著しく遅れを見せてKにとって納得のいく文章はKから生み出されなくなっていた。Kは納得出来なかった己の脚本に。

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