私の願い事

砂上楼閣

第1話

もしどんな願い事も叶う、そんな機会が巡ってきたら。


あなたはどんな願い事をするだろう。


巨万の富?


地位や名声?


見た目の若さや美しさ?


しかし、それが叶ったとして。


自分が最も嫌う相手が、その願いの倍の利益を得るとしたら?


富や名声を得ても、若さや美しさを得ても、自分が嫌う相手はさらにその上の利益を得る。


だとしたら、あなたはどんな願い事をするだろうか?




ある日、願いを叶えてくれる妖精と出会った。


その妖精は、私が持つ強い感情と引き換えに、それに見合うだけのどんな願い事も一回だけ叶えてくれると言った。


けれど、その願いが叶えられると同時に、私が最も嫌う相手はその願いの倍の利益を得るのだという。


その事を知らないままだったら、きっと単純に使いきれないような大金を願っていたと思う。


けれど、知ってしまった以上、間違っても利益が出るような願いをする事はできない。


自分の嫌いな誰かが無条件で自分よりもいい思いをするなんて、許せない。


私にはどうしても我慢ならなかった。


あいつだけは……あいつが無条件でいい思いをするなんて。




私には1人、心の底から嫌っている人がいる。


心の底から憎んでいる、そう断言できる相手。


陰口や悪口を言いふらし、上司の前でだけいい顔をして、自分より下には強気に自分勝手に振る舞うあいつ。


何よりたちが悪いのは、最初は親切な先輩として接してきたこと。


おかげで騙されて、恥をかかされて。


上辺だけ信じる上の人たちからは煙たがられて。


あいつにされてきた事を挙げていけばきりがない。


もし、私が願い事をすれば、間違いなくあいつに願い事の効果が反映されるだろう。


だから私は、間違っても利益になるような願い事をするわけにはいかない。





私は考えた。


どうしたら願い事をうまく使う事ができるだろう。


どんな願い事も叶う。


これは願ってもない、復讐するチャンスだ。


願い事をすれば、それは倍になって嫌う相手にも影響する。


どうすればいい?


どうすればあいつによりよい復讐ができる?


せっかくのチャンス。


簡単に終わらせるなんてモッタイナイ…





そして私は願った。


私の脳への酸素の供給を障害の残るギリギリまで止めてくれ、と。




いつか気になって調べてみたことがある。


人の脳が酸欠状態になった時、どれくらいから深刻な症状が出てくるのか。


答えは、およそ3分。


脳に酸素供給が途絶えてから3分から4分ほどで、脳細胞には重大な障害が生じ始めるそうだ。


5分以上経過すれば、もし助かっても重い脳障害が残る可能性が高くなる。


10分を過ぎれば…


脳機能の回復は見込めないだろう。




私は願い、そして妖精は叶えた。


結果、私の意識はブラックアウトし…


鈍く痛む頭とぼやける意識の中、私は私なりの復讐を終えた事を確信した。

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