雨音の記憶 〜ぬくもりがある場所〜
翠容
雨音の記憶 〜ぬくもりがある場所〜
ひとり
聞くともなし、雨垂れの音、
聞き続ける。
いつの間にか、音に溺れ、
気がつけば、海の底。
暗い暗い、静かな音のない世界。
私はなぜ、ここにいるの。
そもそも、私は一体誰?
……コワイ。カナシイ。サミシイ……。
……だけど、ひとつだけ、わかることがあった。
暗い感情が渦巻く中、
指先が何かに触れる。
これは、私の救いだと。
ふと、目の前が明るくなり、
意識が浮上する。
雨垂れの音は、もう聞こえない。
あれほど降っていた雨は、すでに止んでいた。
ひとり
だけど今、私の隣に人の温もり。
感じなれた温もりなのに、
今日はなぜか、懐かしく感じた。
そのとき、わかった。
あなたに出会うため、私は生まれた。
私がここにいる理由。
ありがとう。
愛してる。
私は隣で眠るあなたに、
そっと口づけをした。
―――――――――――――――――――――――――
この作品は、「恋一夜(ひとよ) — 千の恋の断片 —」の第八夜です。
さまざまですが、恋の瞬間を切り取った短編のひとつとして楽しんでください。
雨音の記憶 〜ぬくもりがある場所〜 翠容 @suzu-yo3
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