第四話 友達


 エクレールのいえからルヴィのいえまでやく三十分さんじゅっぷんほどだとわかり、エクレールはあるいてルヴィの屋敷やしきまでかうことにした。ルヴィの屋敷やしきはじめてって以来いらい何度なんど馬車ばしゃって移動いどうしたものの、どうしてもってしまいあるけるならあるいてこうとめた。

「この屋敷やしきときわなかったけどね…」

 と侯爵こうしゃく心配しんぱいそうにエクレールをる。いよりも緊張きんちょうまさ余裕よゆうがなかったことがわなかった要因よういんではないかとエクレールはおもった。

 エクレールはちいさいうまなられるが、ノワールていではおおきなうましかなかったため、あるくことにしたのだ。侯爵こうしゃく護衛ごえいのために一人ひとり騎士きしをつけた。よろいけていないが、こしからけんげている。エクレールはその姿すがたうらやましかった。




 エクレールは騎士きし二人ふたりあるはじめた。今日きょう前回ぜんかいとはちがうワンピースだ。スカートにけん姿すがた似合にあわないし、戦闘せんとうくわけでもないのだからけんあるくのは物騒ぶっそうだともかんがえていた。なんとなく表情ひょうじょうくらうつむいている様子ようすになった騎士きしはエクレールにこえけた。

「エクレールさまわたし二人ふたりいやでしたか……?」

 騎士きしにふとわれ、エクレールはこまった。

「え、いやなど……その格好かっこううらやましいのです。」

 くびよこ否定ひていした。騎士きしうらやましいとわれ益々ますます意味いみがわからなくなっていた。

わたしもワンピースなどず、ズボンをいてこしけん姿すがた剣士けんしとしてうらやましいのです。わたしはやくその格好かっこうになれるよう頑張がんばりたいです。」

「エクレールさま騎士きしになりたいのですか?」

 エクレールはうなずいた。

「はい、いつかは。」

 騎士きしはそれ以上いじょうなにわずにしずかに屋敷やしきまで同行どうこうした。





 門番もんばんに、エクレール・ユベールともうします。とエクレールは名乗なのった。門番もんばんはハッとしたが、同時どうじくびかしげた。その表情ひょうじょうづいた騎士きし咄嗟とっさに、

「ノワール侯爵家こうしゃくけものです!」

 とつたえると、

失礼しつれいいたしました、どうぞ。」

 くるりと方向ほうこうえ、屋敷内やしきない案内あんないはじめた。

「すみません、たすかりました。」

 とひっそり騎士きしれいった。

「ノワール侯爵家こうしゃくけ名前なまえすと融通ゆうずうきますよ。」

 騎士きしもエクレールにかおちかづけてこっそりつたえた。エクレールはわかったとうなずいた。





 今回こんかいちが部屋へや案内あんないされ、すこっていてくださいとわれた。きっと公女こうじょがどこにいるかわからないからさがしにでもったのだろう。のんびりソファに腰掛こしけ、あるいたあしやすませる。今日きょうっていなくてとっても元気げんきだ。

 背後はいご騎士きしち、公女こうじょつ。しばらくするとコンコンコンとノックがりルヴィがはいってた。

「いらっしゃい!」

 元気げんきよくはいってたとおもえば、うしろの騎士きしてピタリとまった。エクレールも騎士きしもどうした?とあせる。




「あ……今日きょう騎士様きしさま一緒いっしょなのね……」

 とかおあからめてった。騎士きし本当ほんとう心配しんぱいしていて、大丈夫だいじょうぶですか?とこえけた。エクレールはこの騎士きし、もしや顔立かおだちがいのか?とピーンときた。

 エクレールがにしていなかったこの騎士きしは、ノワールていなかでも美男びなんはいほう銀髪ぎんぱつあわ水色みずいろひとみ全体的ぜんたいてきあわ色素しきそ男性だんせいであった。瞳自体ひとみじたいおおきく、ルヴィていのメイドたち反応はんのうてもぼくうハンサムだといえる。騎士きし自体じたい自身じしんのかっこよさに興味きょうみがないため、黄色きいろ声援せいえんおくられてもどうもとしかかえせないつまらない人間にんげんだった。

 (キャーとわれたらくらいればいいものを。)

 としらーっと騎士きしる。

 ルヴィがあまりに騎士きしにメロメロで、エクレールをわすれていることにはらち、せきった。そして、騎士きしった。

「ルヴィ、わたしはなしをするためにここにたんだろう?騎士殿きしどの部屋へやそと待機たいきしていてくれ。」

 ピシャリと騎士きしそとした。今日きょうとも明日あすてきといったところか。日付ひづけまたいでいないが。




 ルヴィはエクレールのことをじっとた。

「ごめん、夢中むちゅうになっちゃって。」

「いや、ルヴィであのひとかおさをることが出来できた。」

 にこ…と微笑ほほえんだつもりが、わらっていなかったらしい。

おこってる?」

 ルヴィがエクレールのかおのぞんだ。

「いやおこってなど……すこ嫉妬しっとしただけだ。」

 エクレールのかおがムスッとする。ルヴィは一瞬いっしゅん、どっちに嫉妬しっとしたんだろうとかんがえたが、騎士きししてルヴィとはなしをしたがった様子ようすると、ルヴィがメロメロになった騎士きし嫉妬しっとしたのだとおもった。お嬢様じょうさまにしては特殊とくしゅかんがえだなぁとしかおもわなかった。





 ルヴィとエクレールはもといた部屋へや二人掛ふたりがけソファにすわり、会話かいわはじめる。

まえいえにいたとき名前なまえいておくべきだったね、なんてうの?」

 ルヴィがエクレールにく。

「エクレール・ユベール」

「ユベールさんね。門番もんばんにもおしえておくわ。今度こんどからユベールともノワールとも名乗なのってもいえはいれるわよ。」

 とニコッとわらう。

失礼しつれいだけど、市民しみんかた名字みょうじがあるのはめずらしいわね。」

 とルヴィはつづけてった。

「え?そうなの?」

 エクレールはまるくしてった。

「このくにでは元々もともと貴族きぞくひと貴族きぞくになったひとにしか名字みょうじあたえられないの。」

 ルヴィがふとった言葉ことばからエクレールはいえでのことをおもかえしていた。霊園れいえん墓石はかいしいてあった名前なまえ唯一ゆいいつめた名前なまえは『ミカエル・ドラクロワ』きっとあれはわたし本名ほんみょうなのだろうとかんがえてはいた。墓石はかいし全部ぜんぶいてある名前なまえには名字みょうじがついた名前なまえばかりで、それが普通ふつうなのだとおもっていた。しかし、霊園れいえんにまつわるうわさひとつ。あの霊園れいえんにあるはか見知みしった名前なまえひとつもないということだ。それぞれ近所きんじょひとねむっているはずなのにっている名前なまえい、そのためどこかとおくのらない貴族きぞくなどがねむっているのではないかといううわさ大人達おとなたちあいだひろまっていた。ミカエル・ドラクロワという名前なまえわりにあたえられたエクレール・ユベール。その名前なまえ霊園れいえん秘密ひみつかくされたひとつなのだろうか。らないことが多過おおすぎるとエクレールはおもった。

「エクレールのお母様かあさまじつ貴族きぞくなのではなくって?」

 ルヴィがエクレールにう。



本当ほんとうにこのいえるまでは貴族きぞくらしはしたことがいんだ。本当ほんとうに。ちいさないえ祖母そぼははらしていて、裕福ゆうふく家庭かていではなかったんだ。」

 エクレールがうつむいてはなす。なにらず自身じしんでも不安ふあんなことが表情ひょうじょうからわかる。ルヴィもめるかった。

「ごめん、へんなことったね。」

 ルヴィはパッとエクレールから目線めせんをずらしかおらした。エクレールはルヴィのにそっとかさね、

いま本当ほんとうにわからないけど、いつかわかったらかならうから。ってて。」

 エクレールは力強ちからづよった。ルヴィはすこおどろいたがうんとうなずいた。

「いつかそのときおしえてね。」





「エクレールのこと、エルってんでもいい?」

 ルヴィが突然とつぜんった。本名ほんみょうばれるようになってもわらずべそうだな、とエクレールはおもった。

「いいよ。」

 エクレールはニコッとわらう。

じつは、まだってなかったことがあるんだけど。」

 エクレールはつづけてった。

わたし剣士けんしなんだ。」

 さきほどからかさねたままった。








「えっ⁉︎」

 ルヴィはおどろいた。

 ルヴィは手元てもとにあったエクレールのをまじまじとた。令嬢れいじょうにはないたくましいで、沢山たくさん鍛錬たんれんかさねたのがわかるだった。

「い、いつからならっているの……?」

六歳ろくさいから。はじめてもう六年ろくねんつ。」

 ルヴィはかおあおざめひどくおどろいている様子ようすだった。

「ルヴィはうつくしいから、いつかどこかの殿方とのがた嫁入よめいりするだろうけど、わたしはいつか騎士きしになってぐんはいりたいとおもっているんだ。」

 ルヴィはうつくしいとわれすこれるもなんとっていいかわからない表情ひょうじょうだ。

「いつかはなれるそのまで友達ともだちでいさせてしい。」

 ルヴィの右手みぎて指先ゆびさきにエクレールはキスをする。ルヴィはポッとかおあからめた。エクレールはさびしげな表情ひょうじょうだ。

はなれるなんてゆるさないわ!」

 ルヴィはエクレールのかお両手りょうて強引ごういんうえかせる。

騎士様きしさまになっても一緒いっしょよ!はなれないで、おねがい。」

 エクレールのくびきつく。ズッとはなはなおとこえた。ルヴィはなみだながしていた。エクレールはそっとルヴィの背中せなかまわした。






 なみだき、ルヴィていのメイドがってたクッキーを二人ふたりべた。いたルヴィが、

わたし、もっとドロドロしたおんなだったらどうしようかとおもってたの。」

 ドロドロ?そんな液体えきたいひとなんているのか?と本気ほんきおもったエクレール。そのかんがえがすべ表情ひょうじょうていた。

「プフッ ドロドロってうのはじゃなくて、性格せいかくって意味いみよ。社交界しゃこうかいはいつも、他人たにんからミスをつけられたら蹴落けおとされるシビアな世界せかいなの。たがいがたがいを監視かんしうみたいな世界せかいわたし大嫌だいきらいなの。」

「へえ……大変たいへんなんだね。」

 いフォローの言葉ことばてこず、エクレールはあたまかかえた。

「そういうづかいはうれしいわ。ありがとう、エル。だから想像そうぞうよりうそがつけないさっぱりしたてくれて安心あんしんしたの。」

 エクレールははじめてあだばれたことや、自分じぶん性格せいかくがバレバレなことになにえなくなった。





「だからね、わたし社交界しゃこうかいきないで、公爵令嬢こうしゃくれいじょうだけどはたらいてきていこうとおもっているの。」

 とつげば自身じしんはたらくより苦労くろうすくないはずなのに、とエクレールはおもった。ルヴィにはルヴィなりのかんがえがあるのだろう。

大人おとなになるまでささっていこう、友達ともだちなんだから。」

 ルヴィはす。エクレールはうなずき、った。

 十二歳じゅうにさいたがいにはじめての友達ともだちだった。







*************************







 その何度なんどい、なかふかめて二年にねん経過けいかした。

 あるエクレールはまえいえからってほんってった。

「おたせ、エル!」

 ルヴィのエルびにもだいぶれた。にわ大木たいぼくしたで、あしあいだほんひろげてっていた。

今日きょうほんってたの?」

「そう、わたし一番いちばんきなほん。」

 このレディベロアのほんもと小説しょうせつなのだが、どもにもみやすいよう絵本化えほんかされたほんだった。成長せいちょうしてから小説しょうせつんだが、エクレールにはしたしんだ絵本えほんのレディベロアがきだった。

 ぺらりぺらりページをめくってルヴィにかせをする。

 ルヴィは自分じぶんではほんをあまりまないようだったが、夢中むちゅうになってはなしいていた。かせをえると、

「すごい、なにこのおはなし。なんでわたしらなかったんだろう。」

 このほん祖母そぼわかころったほんだとつたえると、

「ベストセラーじゃん!わたしもこのほんってもらえないかなぁ……」

 と芝生しばふたおんだ。素敵すてきなおはなしだったと余韻よいんひたっている。

「エルはレディベロアがきなの?」

「……うん。」

「そっかぁ、お似合にあいだよ。」

 ルヴィはニコッとわらった。共通きょうつうはなし出来できただけでうれしかった。何度なんどうちたがいにすようになり、ルヴィは簡素かんそなワンピースで、エクレールはブラウスにズボンとうごきやすい男装だんそうちかそうな服装ふくそうをするようになった。






 数ヶ月後すうかげつご護衛ごえい騎士きしをつけてルヴィとエクレールでまちた。ショッピングをするためにてみることにしたのだ。まちあるいていると、一人ひとりおとこがエクレールをて、

「あっレディベロア…」

 とあとずさる。その名前なまえいた女性陣じょせいじんはすぐさまエクレールのほうき、ってた。

「レディベロアさまだわ‼︎」

「もしかしてエクレールさま?」

 と複数人ふくすうにんかこまれる。ルヴィもともにだ。

最近さいきん剣術けんじゅつ学校がっこうほうにはいらしてないの?」

 そのなか一人ひとりがエクレールにく。

いま剣術学校けんじゅつがっこう卒業そつぎょうして、魔法学校まほうがっこう騎士部きしぶはいため騎士きし訓練所くんれんじょ鍛錬たんれんんでいる。」




 ルヴィにとってすべてが初耳はつみみだった。おんな子達こたち誠実せいじつ素敵すてきだわ〜とメロメロになっている。エクレールはおんな子達こたちたいしてニコニコと笑顔えがおでいることにルヴィがむうっとなった。ルヴィはエクレールのうでつより、

「エル!くよ!」

 とまわりをかこ女性達じょせいたちけであるす。おんな子達こたちはレディベロアさま!とあるすエクレールたちこえける。




今度こんど騎士きし訓練所くんれんじょで、トップをめる大会たいかいがあるからてね〜」

 とうしろのおんな子達こたちあとにする。おんな子達こたちはハーイ‼︎と元気げんきかえしていた。ルヴィはこころなかで、

 (それも初耳はつみみなんですけど‼︎)

 とおこってズシンズシンとあるしていた。護衛ごえい騎士達きしたちこえけるもなくルヴィがエクレールのほうく。






「どうしてってくれなかったの!」

 エクレールはきょとんとしている。

「え、騎士きし目指めざしてるってったけど……」

「そうじゃなくて!なんでわたし大会たいかいてってってくれないの!」

 ルヴィははじめての嫉妬心しっとしん感情かんじょう制御せいぎょすることが出来できず、なみだをポロポロこぼす。

「ルヴィ、今日きょうはそれをためたんだ。さきにあの子達こたちっちゃったけど。」

 ルヴィのなみだまる。

まちかけるとっても、あるけばつかれるだろうからカフェにでもってはな機会きかいつくろうとおもっていたんだ。……だからくな。綺麗きれいかお勿体もったいいぞ。」

 目元めもとなみだ親指おやゆびでそっとく。はたかられば完全かんぜんにカップルだったが、二人ふたりづいていない。ルヴィがあるさないため、エクレールはぐいっとにぎあるした。

 十五歳じゅうごさいになるまえふゆだった。







 はるになりエクレールとルヴィはそれぞれいそがしくなる。ルヴィは入学試験にゅうがくしけん勉強べんきょうで、エクレールもその勉強べんきょう大会前たいかいまえ騎士試験きししけんため鍛錬たんれんなどで時間じかんはなくなった。

 ノワール侯爵こうしゃく勝手かって茶会ちゃかい招待しょうたいした男性達だんせいたち数名すうめいやってる。




「ようこそ!エクレール・ノワールともうします!」

 と元気げんきよく男性陣だんせいじんもとあゆむ。名前なまえいた途端とたん男性達だんせいたち侯爵こうしゃくはどうにかして相手あいてつけさせてあげたいという良心りょうしんでやっていたが、百発百中ひゃっぱつひゃくちゅう大失敗だいしっぱいわっていた。エクレールはこれを面白おもしろかんじ、勉強べんきょう合間あいま気分きぶん転換てんかんにさえなっていた。

父上ちちうえ。もうあきめたらどうですか?」

 侯爵こうしゃくはショックがおおきいようだ。せっかくむすめそだてられたのによめしたいおやなどいないだろう。勇気ゆうきしてよめそうとすると男性達だんせいたちからことわられ、女性じょせいとしてのみちがよりはなれていく。




よめになどかなくても国軍こくぐん隊長たいちょうになってこのいえ価値かちたかめます。それではりないのですか?第一だいいちははにおねがいされてないでしょう?よめしてと。」

 侯爵こうしゃくははた、とエクレールのかおる。

「なぜ、そんなことをうんだ。よめきたくないのか?」

きたくありません。ここでやるべきことが沢山たくさんあります。」

 侯爵こうしゃくひとみぐじっとる。

父上ちちうえわたしすべわったら祖母そぼ母国ぼこくかえるのです。このくに一生いっしょうえるかんがえはありません。」

 ひらりとジャケットをひるがし、部屋へやた。






 侯爵様こうしゃくさま。と執事長しつじちょうちかづく。

侯爵様こうしゃくさま指示しじ調しらべたユベールについてですが、エクレールさまのお母様かあさまとお婆様ばあさま以外いがいには該当がいとうするひとがいませんでした。」

「ふむ……ユベールはあの三人さんにん以外いがい存在そんざいしないということか。」

 侯爵こうしゃく口元くちもとて、すこなや仕草しぐさをした。

「もうすこ調しらべればよろしいですか?」

「いや、もう調しらべるのをめろ。真実しんじつ辿たどいてしまったとき、エクレールははなれてしまうかもしれない。正式せいしきにノワール一員いちいんになったとはいえ、エクレールのなかではユベール存在そんざいおおぎるんだ。まれそだったいえだからな。エクレールはさっき、すべわったら祖母そぼ母国ぼこくかえるとった。ユベール秘密ひみつ秘密ひみつのままにしておかなければならない。」

 と侯爵こうしゃくしずかに執事長しつじちょうった。







 エクレールは勉強べんきょう合間あいまけん鍛錬たんれんいそしんだ。成長せいちょうとも身長しんちょうび、筋肉きんにくによりまわりの女性達じょせいたちよりもガタイの姿すがたわり、男装だんそうがより似合にあうようになった。かみくろちか紺色こんいろわりした一本いっぽんベロアのリボンをつけるヘアスタイルにわった。あまりむね目立めだたないため、初見しょけんひとには美男子びなんし間違まちがえられることもえてきた。

 そして騎士試験きししけん、いつもどおりにこなしたエクレールはたりまえのように合格ごうかくし、大会たいかいへの出場しゅつじょう資格しかく獲得かくとくした。今夏こんか大会たいかいおこなわれる予定よていだ。

 ルヴィには時間じかんれないため、手紙てがみ内容ないようつたえた。




 大会たいかい当日とうじつ、ルヴィに数ヶ月すうかげつぶりに再会さいかいした。

 ルヴィは女性じょせいとしてより花開はなひらき、うつくしさにみがきがかかっていた。エクレールは自分じぶんおんなであることをわすれていた。





「エル?」

 ルヴィはエクレールをすこ見上みあげてうと、らないひとったようによそよそしくなった。

「ルヴィ?どうしたの?よそよそしくない?」

 ルヴィはドキッとほほめた。エクレールの綺麗きれい軍服ぐんぷくのような姿すがた王子様おうじさまのようにキラキラかがやいてえた。

「き、のせい……心配しんぱいでちょっとしかねむれなかったせいよ。」

 ふいっとそっぽをく。




「ま、応援おうえんしててよ。姫様ひめさま?」

 ルヴィの右手みぎてかるいキスをする。エクレールはこのごろ王子様おうじさまムーブにハマり、おんなをときめかせて反応はんのうたのしんでいるのだ。ルヴィがおこるとおもったエクレールは、素早すばやはなはしる。



「こらーーー!エル!!」

 こえっておこるルヴィのかお火照ほてっていた。

 心配しんぱいするルヴィの気持きもちもむなしく、おにようたおしていくエクレール。エクレールの実力じつりょくまったらなかったため、こんなにつよひとだったのかとおどろいた。

わたし心配しんぱいはなんだったの……」

 ルヴィは客席きゃくせき呆然ぼうぜんくす。




予想よそうえてきた?」

 となりこえがしてふと、こえほうく。エクレールのちちであるノワール侯爵こうしゃくだった。

侯爵様こうしゃくさま……」

「あのいえなかでトップの戦闘狂せんとうきょうだよ。すこまえまでよめそうとしたけど、あののぞんでないみたいだし。だれ戦闘狂せんとうきょうになったんだろうね。」

 とケタケタ侯爵こうしゃくわらった。あんなにやさしいおんながそんな一面いちめんっていたなんて、まったらなかったことにすこさびしさをおぼえた。






 ちいさいころエクレールがルヴィにおしえた『レディベロアとクイーンルージュ』。絵本えほんってもらい、小説しょうせつんだ。エクレールがおしえてくれてからぬまのようにハマりそのほん夢中むちゅうになった。エクレールがレディベロアならばわたしは、エクレールにとってのクイーンルージュとなりパートナーとしてとなりあるきたいとねがった。街中まちなかでエクレールがレディベロアとばれていたことを後々本人あとあとほんにんくと、ずかしそうに人間離にんげんばなれしてるつよさ?とかからレディベロアってわれてるっぽいとれていた。自分じぶんつよいとうのもれるのだろうなとおもっていたが、予想以上よそういじょう人間にんげんからはずれたようなつよさだった。







「ルヴィ!」

 とこえこえて、こえもとさがすためにキョロキョロと目線めせんうごかす。まわりの視線しせん自分じぶんいていることにづいた。そのさきはエクレールがいた。

「エル……」

優勝ゆうしょうした!」

 エクレールはニコニコとむかしわらぬ笑顔えがお報告ほうこくをしてきた。会場かいじょうのMCから優勝者ゆうしょうしゃのコメントをもとめられ、くるりときをえて壇上だんじょうがった。

「えー優勝ゆうしょういたしましたエクレール・ノワールともうします。来年らいねんから魔法学校まほうがっこう入学にゅうがく騎士部きしぶはい予定よていです。そして将来しょうらい国軍こくぐんはい隊長たいちょう目指めざしたいとおもっております。将来しょうらい部下ぶかになったら諸君しょくん覚悟かくごしていてください。」

 ピリッと空気くうきがひりつくが、エクレールにてないと実感じっかんする男性陣だんへせいじん恐縮きょうしゅくしている。




 男性達だんせいたちちぢこまる一方いっぽう、ルヴィはホッとしていた。つよ騎士きしであろうとなかろうとエクレールはエクレールなのだと。ルヴィにたいしては綿飴わたあめれるようにやわらかくあつかうが、つよさにたいして追求心ついきゅうしんがあり男性だんせいにはこおりようつめたさをそなえたところがルヴィはきになっていった。




 大会たいかいえたエクレールは勉強べんきょうえ、ルヴィの屋敷やしきかようようになる。大人おとなうまれるほど身長しんちょうびたエクレールは自分じぶんうまでルヴィていかよっていた。急成長きゅうせいちょうで150後半こうはんあった身長しんとょうは168㎝ほどまでびていた。ルヴィもあまりびていなかったものの、入学間近にゅうがくまぢかにはエクレールとならぶくらい成長せいちょうしていた。



 入学試験にゅうがくしけんには余裕よゆう合格ごうかくし、たのしくふゆごした。はるから寮生活りょうせつかつになるため、自分じぶん生活せいかつするすべにつけた。

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愛しのクイーンルージュへ 深海 @4-8-6-9-

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