ZXA/Steam City
ばりばち
days(before scramble)
ナイトロウ探偵事務所。
旧イギリスにあたるグレート・ブリドン、その主要な
「師匠も掃除手伝ってくださいよー! …というか、出した本片付けてくださいってば!」
「あ"ー…… いいって片さなくて、まだ読むんだから……」
少年のよく通る声と機械音の混ざった低い男性の会話が聞こえる。
「そういっていつも出しっぱなしじゃあないですか!」
「あーいいからいいから…… それは捜査資料でそれはまだ読みかけのコミックで……
ん? お前が両手に持ってんの、どっちがどっちだっけ?」
「やっぱりとっ散らかってるじゃないですか! 事件解決したからって弛み過ぎですよ! 先代が見たらまたどやされますよ!」
「ぐう……」
「ぐうの音出してないで! ほら、顔洗ってストレッチして! 体が体なんだから、しゃんとしないと錆びちゃいますよ!」
「わかったよ……そうかっかするなよ
ホレ、先にまず巻いてやるから」
「ッ…… もうしょうがないなあ……」
ナイトロウ探偵事務所の二人はそれぞれ半機械人間である。
とある時間を経て、後天的に肉体を
同じような服装を柄や物違いで着まわしつつ、お気に入りの帽子をその日の気分で変える妙なこだわりを見せたファッションをしている。
そのウルフロックに悦びと恥ずかしさが混じった表情で首のゼンマイを巻かれる少年、カムイ・ナイトロウ。
ウルフロックの先代からの形見であり、その見た目は普通ショートカットにショートパンツの少年だが、首筋には穴が空いており、そこには手持ちのゼンマイを刺して巻くことで生活動力を発生させている。
彼等を狙う秘密結社、犯罪組織。 そうでなくともスチームシティでエゴを貫かんとする怪盗・怪人。
ナイトロウ探偵事務所は、そんな物達と対峙する水際の何でも屋であった。
「うぃ、巻き終わり。」
鉄仮面で表情の窺えないウルフロック、身振りで一作業終わった区切りの雰囲気を出す。
「ありがとう、ございます……」
赤面しつつ返事するカムイ。ゼンマイ巻きには彼独自の感覚があるのだろう。
「おう。 じゃ、顔洗って外で体慣らしてくるわ。 片付け頼むな。」
「わかり、ました!」
事務所内の片付けをカムイに任せ、ウルフロックは洗面所で鉄仮面に水を被せ、金色に光るライトアイで鏡を睨む。
変わらない日常、変わり続ける超常。その渦中に身を置く覚悟をいつものようにして。
(さて、今日は……)
事務所前の玄関でがきんごきんと駆動音を鳴らすウルフロック。
身支度をしている時に見たカレンダーが、カレンダーに記述した自分がバグっていなければ、今日は。
「来たわよ! ロボット探偵にその弟子のアンドロイドショタ!!」
閑散とした路地裏に不釣り合いなハツラツとした声が響く。
「どーも、お嬢さん」
「苦しゅうないわ、仮面を取りなさい!」
「お嬢様、ウルフロック氏の顔は……」
「そうだったわね!!!」
「声がでかい……」
ウルフロックを気圧す女性、その傍にいる執事。
シャーロット・アーステール。 グレート・ブリドン有数の蒸気機関統制企業の長女である。その高位の肩書きを持ちながら、フットワークが軽くあらゆる事件事故に首を突っ込むことから"浅瀬の令嬢"と揶揄される20歳ほどの女性だ。
動きやすさを重視した改造赤ドレスに身を包んでいる。
その傍には、高身長で顔が細長い執事が手を後ろに組み空気と化している。
「で、お嬢。 今度は何で?」
「話が早いわね! 仕事に対して真摯なのは好きよ! でもまずは
こうして今日も彼等の
スチームシティ。
常に煙が立ち上る蒸気機関の街。グレート・ブリドンはハイドロ・ベンにて。
物語の渦は、止まらず巻き起こっていく。
ZXA/Steam City ばりばち @beagle_18
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