―緑と光の間に―
- ★★ Very Good!!
これは、心をふわりと包み込むような優しい物語──。
サリナスの森の繊細な描写にまず魅了されました。葉のきらめき、土の香り、小さな命のぬくもり……まるで自分が森にいるかのように五感で感じられる世界が広がっています。
主人公ノルの、純粋で好奇心に満ちた瞳の奥に、確かに息づいている強さと温かさ。
その彼女が出会う“自分にそっくりな少年”エア。
読者はやがて、ただの不思議な出会いではないことを知り、静かに心を揺さぶられます。
母ロエルの死はあまりに突然で、まるで冬の空気のように張りつめていて、涙がこぼれました。でもその死がノルに新たな“家族の形”を与え、静かに“生きる意味”を紡いでいく展開は、深く胸に沁みます。
この作品は「命」と「つながり」を丁寧に描きながら、読者に静かな希望を届けてくれるようです。
──やがて訪れる光が、きっとノルにも、私たちにも差し込んでくる。そんな予感に満ちた、宝物のような物語でした。
妖精の羽音が聞こえてきそうなほど繊細で温かいファンタジー。ノルの旅を、これからもそっと見守りたくなります。