薄暗い部屋の一角に、揺り椅子に座って船を漕いでいたんだ。青白いカーテンの隙間からはしんしんと降り積もる粉砂糖のような雪が見えてね。わたしはいつのまにかぬるくなってしまったミルクを口に含んで思うんだ。ミルクは苦かったか?とね。カップを覗いてみれば、淹れてあったのはコーヒーだったのサ。あぁ、たまには大人の味わいをたのしもうと、それに変えていたことすら忘れてしまってね。けれど不思議なことに、まぁもう1杯、もう1杯飲もうじゃないかと、ついつい口を付けてしまうんだ。
あぁ!なんてもったいない!
この苦くも甘い、あまりにも繊細な味わいの物語を読み終えてしまう日がくるなんて!
わたしは空になったカップを傍目に、頬杖をついてその余韻に浸るんだ。
まさにこれは、多く語るまでもない。
美しい物語なのだと──。
拙いことばかもしれませんが、最初から最後まで、まるで長い夢を彷徨うような読書体験でした。
灰色の大地に浮かぶ都市――マルカジット。かつての繁栄を失い、魔力に蝕まれたその地で、人々は生を手にし、また失い、移ろう――そんな世界が、本作に息づいていました。旅人として彷徨い続ける不死の青年と、人形少女と呼ばれる静かな佇まいの少女。その出会いから広がる“居場所”を探す旅路は、淡くも鋭い苦悩と希望に満ちています。
全45話にわたるプロットの中では、それぞれの登場人物が、それぞれの陰影を伴って歩んでいました。老人や便利屋、不老不死を求める貴族、都市を管理する魔術官僚たち……彼らの言葉は冷たくもあるし、ときに哀しみに満ちていて、読み手の胸を静かに捉え続けました。
そして、少女の瞳に映る世界。再生と喪失を希求しながら、その瞳はわずかな光をたたえています。少女と旅人が交換する沈黙や視線のやりとりには、余韻が深く込められていて、ページをめくる手を止められませんでした。
物語が進むにつれ、都市の階級構造と運命をめぐる権力闘争が浮き彫りになり、主人公たちの絆、そして対峙する世界への問いが明晰に、しかし静かに迫ってきます。これは単なる冒険譚ではなく、不条理に満ちた世界で“居場所”を見つけようとする心の旅――そう感じました。
拙い感想ですが、最後まで読み終えたとき、確かな余韻が心に残り、静かな夜に静かに咀嚼したい物語だと思っています。
またいつの日か、物語の続きを、心静かに紡ぐ場所へ……そっと戻ってきたいと思います。
ご縁に、心から感謝を込めて。
— 黒宮ミカ (*´-`)✨