第2話
星空へと続く、長い階段。
けいくんは、一人で駆け登っていきます。
やがて、階段は星空のなかにある扉に、突き当たりました。
けいくんがそぉっと扉を開けると...
そこは今まで見たことも無いような不思議な場所。
空は、薄い青とピンクのマーブル模様。
足元には、小さいものから大きいものまで、たくさんの星の形をした花が咲いています。
花からは、わたあめみたいな甘い香りが漂います。
キョロキョロしながら進んでいくと、大きな池が。
けいくんが、透明な水の中を覗き込むと、池全体が光を放ち、一瞬眩しくて目をギュッと閉じます。
次に目を開けると、目の前には、けいくんと同じくらいの背丈で金色をした星の帽子、星模様の洋服を纏ったこどもが、池の上に立ってこちらをニコニコしながら見つめています。
そのコは、けいくんに手を差し出すと
「こんにちは。ようこそ、星の還る場所へ!」
「こんにちは!ぼくの名前は、けいだよ!」
「君のお名前は?」
けいくんが、そのコに尋ねます。
「名前...。みんなはボクを『ピュラ』って呼んでいるよ」
ピュラは名前を告げ終わると、けいくんの手を握り、
「行こう!」と、駆け出しました。
空に架かった大きな虹の滑り台、どこまでも続く色とりどりの星の花の間を追いかけっこ。
遊び疲れて寝転んだけいくんのそばで、ピュラは星の花冠を作って、けいくんの髪に優しく乗せました。
「今日は、ぼくとっても楽しいよ!」
「ねぇ、けいくん。」
ピュラは続けて
「ここで、ボクとず~っと一緒に遊ぼうよ!」
と言いました。
「楽しそうだね!でも.........」
けいくんは、明るい表情から少しずつ寂しそうな顔に変わります。
「お母さんに逢いたいな...。」
「そうだ!ピュラ、家に遊びにおいでよ!」
「一緒に、家でたくさん遊んで、お母さんの作ってくれるご飯も一緒に食べて、それから......」
「それは、できないんだ。ごめんね。」
「そっか...。」
ピュラは立ち上がり、けいくんの手を握り起き上がらせると
「ここでお別れだよ、けいくん。とっても、楽しかった!」
「ぼくも、とっても楽しかった!」
「まっすぐ進むと、扉がある。」
「多分、もうすぐ夜明けだ。星の階段が消えてなくなる前に...。」
「さぁ、走って!」
けいくんの背中をトンっと優しく押します。
けいくんは、振り向かずに、全速力で扉へ向けて走りました。
目の前に現れた扉を勢いよく開けると、空は明るくなりかけてきていました。
星ももうほとんど見えません。
けいくんは急いで階段を駆け降りていきます。
「けいくん~!けいくん~!」
やがて、お母さんの声が聞こえてきました。
どんどん降りていくと、あとちょっとのところで階段が少し消えています。
「えいっ!!」
けいくんは、階段の先で待っていたお母さんに飛びつきました。
「おかえり、けいくん!」
お母さんが、けいくんをぎゅぅ~っと抱きしめると
「ただいま、お母さん!」
と、けいくんもお母さんをぎゅぅ~っと抱きしめました。
おしまい
星空の夜に。 玉置ぽえた。 @poeta
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