ムームーと鳴く
白雨冬子
ムームーと鳴く
まなうらにまで暗闇が先回りするいくつものドアを閉じても
知恵の実を隠れて噛るアダムの歯並び 時計の電池を抜いた
裏返す枕、寝返り、亡国のスペアカードの神経衰弱
雨樋につどいて落ちる水音の私はロボットではありません
一匹で養うために砂を吐くあさりのように煙草を吸った
燃える虹をこぼして蝿が浮かぶのは胸の重さを押し上げる海
砂時計の重力 フィルムが焼けながらロールシャッハの岬を開く
なにもかも忘れていいよ年輪の芯があなたを支え続ける
幼虫はムームーと鳴くムームーが現れるまで呼ぶのではなく
落月よ やわらかな土に包まれてやすらかに発芽してください
ムームーと鳴く 白雨冬子 @hakootoko
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