第5話



 アミアはメリクを王宮に呼び、彼を抱きしめると二度とこんな真似はさせないと強く彼に詫びた。


 ……すでにその時には、アミアが二週間もの間王宮にいながら、今回のことに対して何の手も打たなかった第二王子リュティスと、派手に遣り合ったらしいと聞いていたメリクは、かつてはただ慕った女王アミアカルバの素直さを、この時だけは少し呪ったのである。


 アミアとリュティスがどのような話をしたのかは聞かずとも分かった。


 リュティスはメリクの存在が国にとって争いの火種になると言ったのだろう。

 恐らくそれを示すために動かず黙認したのではないかとアミアには伝わった。

 だが心からメリクを我が子のように思う女王の心は、第二王子の言葉に逆に必要以上硬化してしまった。

 メリクを王宮から遠ざけるべきという進言に、そんなことは決してさせないとアミアは厳しくはねつけたのである。



 女王の盾に守られ――結局メリクは今回も身動きが出来なくなってしまった。



◇   ◇   ◇



 そんな中、メリクにとって一つだけ心から嬉しいと思うことがあった。


 イズレン・ウィルナートが総学の試験で成績優秀を修めて、次回の宮廷魔術師選定試験への推薦状を学院から送られたのである。


 イズレンとメリク、そして常日頃からつるんで遊んでいる彼らの数名の仲間達は、深い雪の中を笑い転がりながらサンゴール城下町へ繰り出して、酒場の一室を貸し切って、朝まで友を祝って踊り騒いだ。



 ……こうして993年は青年の心に悲しみと喜びを刻んだまま通り過ぎ去って行った。




【終】

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その翡翠き彷徨い【第38話 993年、冬】 七海ポルカ @reeeeeen13

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