第16話 バレテイタ

 まったく、姉さんには毎度毎度驚かされてばかりだ。


僕が知らない間に変なスキル習得してんだもんな。でも、これからは気が付いたら目の前や背後に姉さんがいるかもしれないということだ。五感を研ぎ澄ませておこう。


念のため自室の鍵をかけておこう。


荷物を床に放り投げ、ベッドにワイシャツの第一ボタンをはずしながら寝転がる。


疲れたな。主に姉さんに。


そういえば…。




「そういや、佐倉先輩ってモノノケ見えないよな。だったらなんで最後の方あいつ(オタクモノノケ)に話しかけたり、見たりできてたんだろ」




僕はおもむろにスマホを取り出し、ソシャゲを開き、ログインをしながらカゲロウに尋ねる。


小さい頃からモノノケに関わってきていたから、一般人よりは”こっち側”には詳しいけど、まだ知らないことばかりだ。そもそも僕は神白家でモノノケや異能の義務教育的なものを受けていない。いや、受けさせてもらえないの間違いか。まぁそりゃそうだよな。異能どころか霊力もない醜いアヒルの子に教えることなんてないよな。ま、親が白鳥でも何でもないから僕は一生醜いアヒルなのだが。




「おそらく、モノノケに関わったことでモノノケを認知できる『第六感』が覚醒しちゃった的なアレですね」




「アレか」




「はい、アレです」




アレとはいったい何なのか。そんなことどうでもいいか。


うわ、なんだここ。プレイヤーの名前全部ドヤコンガじゃん。世紀末やな。




「でも、そうなると大分面倒だな。これ以降も見えちゃうと寄ってくるかもな」




「はい、慣れてると無視できるかもですが慣れてないとどうしても反応してしまいますからね」




「だよねー」




「塁君、ご飯できてるわよ♡」




「ちげふぉえぴやぁぁぁぁぁぁ!!!」




ソシャゲをしてたら姉さんが隣で寝ていた。


びっくりしすぎて腰抜けた。


そのまま地面を這うようにして後ろ向きで下がる僕。


さっき気を付けないとって思ってたばっかなのに気づけなかった。ていうか鍵は!?


とりあえず逃げなくては!!




「あーん、もうどこ行くのよ塁君♡」




「ん?どこってー?えーっとねー安全な場所カナ?」




声を高くしながらものすごい速度の四つん這いでドアの方まで逃げる。




「だめよー!これから夜ご飯なんだから!」




逃げようとする僕の前に立ちふさがり暴れる僕を思いっきり抱きしめる姉さん。




「ぎゃああぁぁ離せー!!」




「もう!わがままな子ね!そんな子は………」




まさか!?




「無償の”愛”で包み込んであげるんだから♡」




僕を抱き上げ、目を閉じ、僕に唇を知被けてくる姉さん。




「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




より一層勢いを増して暴れる。


そして、その拍子に…。




むにゅ




「いやん♡」




姉さんの胸に手が当たった。その一瞬の隙を逃さず姉さんの手から逃れる。




「んもう…塁君ったら………そんなっ………もう!」




両手を赤くなった頬に当て、首をブンブンと振る姉さん。そして………。




「………イイヨ?」




「何が『イイヨ?』だ!そもそも家族でそんなシチュエーション起きるわけないだろ!」




「でも、お姉ちゃん塁君の好きな見た目に合わせてるつもりよ?髪型とか、服装とか……」




確かに見た目はいいだろう。


髪型は長めのポニーテールに触覚ヘア。服は少しフリフリがある可愛らしい服装という割と僕が好きな要素が詰まっている。




「違うんだよ!そういう服はもっと可愛らしい子が着るから可愛いのであって、姉さんみたいな美人系の人が来たら萌えないの!!」




「塁君ったら……お姉ちゃんそんな美人?」




「論点そこじゃねぇ!」




いや、そこでもないな。もっと重要なのは………。




「そもそも、なんで僕の好みとか知ってるんだよ!言ったことないだろ!」




「だって、本棚の真面目そうな本の裏に、ちょっと表紙がエッチな本がまるで隠すように入れてあったからそこに出てくる女の子を研究して塁君の好みを………」




「なんでそのこと知ってるんだ!?」




「大丈夫だよ。塁君も男の子だからね!そういうのに興味持っちゃうお年頃だしね!」




「やめて!それ以上言わないで!僕のライフはもうゼロよ!」




知らない間に家族に僕の好みが知られていた。死にたい。




「だからね、ほらっ」




そう言って姉さんは自分のスカートをめくる。そこにあるのは白と水色のストライプのパンツ。初期装備であり伝説の装備であるそれは老若男女とは言わないけど、ロリからお姉さんまで誰が来ても似合うといわれるパンツだった。




「塁君が好きな柄のパンツも履いてるのよ!」




「きゃあああああああぁぁ!!」




キャラにも合わず女の子みたいな声が出てしまった。


誰が家族のパンチラなんぞ見たいものか!




「変態かてめぇは!!」




「ああ、ちょっと!」




顔を赤くしてもじもじしている姉さんを無理やり部屋の外に出す。




「はぁはぁはぁ………」




ドアの外では「もうっ塁君ったら!」と言って一階に降りていく姉さんの足音が遠ざかる。


ひとしきり息を落ち着かせて思う。




「どっか良い隠し場所あるかな

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異反者〜少年よ筋肉を付けろ〜 @akatsuki0526

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