第5話
私の名前は文紀。
歴史を探求している学者です。
歴史探求といっても、
民族史ですが。
数十年前に
時間旅行が出来るようになって
歴史探求としても革新的か
と思われていましたが、
学者達はこだわりで
時間旅行で真実を確認しに行く人は
多くはありませんでした。
元々過去に行ける上限は
決まっていますしね。
ですが、
どうしても私には
行きたい時代がありまして、
でもそれは学者としては
あまりよくないことで
選ばれて行くなど、
よりあり得ないため
施設から行くことになるのですが
心のなかで激しく葛藤していまして。
でもようやく学者としての
一線を越えることに
決めたんです。
····それは数日前のことなのですが。
その時の話をしましょう。
私はこの国で技術革新とやらが
起きた70年前に行きました。
スマホという古い連絡用の機械を
子供でも持つようになった時代です。
「本当は行きたくない。
でも気になるのだ。
子供達が、大人達が
“スマホ“をどのように使っていたのか。」
私はそのまま施設へ向かった。
施設は何度かホログラムで
見ていたが、
実物はそこそこの大きさだった
施設の中に入ると
ロボットが応対をしていた。
『ソコノキカイノナカニ
ハイッテクダサイ。
アトハキコエテクル
コエニシタガッテ
クダサイ。』
言われた通りに
転送装置と思われる
機械の中に入った。
この時点では
行く前の葛藤は消えていた。
どこからともなく
声が聞こえてきた
〖どちらに行かれますか。〗
「過去だ。70年前の。」
〖分かりました。
70年前ですね。
少し揺れたような感覚が
するかもしれません。
あと帰るときは、
帰りたいと
願うのですよ。〗
そう言われたあと、
ぐわんぐわんとした
揺れるような感覚に
襲われた。
70年前は何かもが
違っていた。
まず車が地面を走っている。
私の少し地面を浮く靴も
70年前の靴に似た形状になり
地面に足をついている。
この時代では
まだ、温暖化によって
地面に立てなくなるということが
起きてないようだ。
そんなことは
どうでもいい。
せっかく来たのだから、
隅々まで探索しよう。
私は様々な場所を探索した。
何もかも古いモノばかり
でも学者としては
嬉しいものだ。
持って帰れないようなのが
残念で仕方がなかった。
だが、本題である
“スマホ“の調査は
また湧いてきた
激しい葛藤が邪魔して、
出来ていない。
とりあえず私は
この時代の人が
悩んだ時に行くという
“コウエン“に行ってみることにした。
人が集まってるだろうしな。
“コウエン“に行くと、
ベンチがあった。
だが、すべて埋まっていた
ベンチには
座ってみたかったのだが。
悩んでいると、
一人の幼児が近付いて来た。
「おじさん。
だいじょぉぶ?
なんかこまってる?」
「ああおじさん学者なんだが、
少し研究しようか
悩んでることがあってな。
いや難しくて
わからないよな。
ありがとうな
心配してくれて。」
「そーなのー?
がんばってね。
まよってても
やったらいいとおもう。」
幼児のお父さんらしき人が
こちらに気付いた。
「こら、時生。
なにやってるの。
こっちで遊ぼう。」
「すいません。うちの時生が。」
「いえいえ、大丈夫です。
少し悩んでるように
見えたようで
相談に乗ってくれたんです。」
「そうなんですね。
ほら時生行くよ。
ありがとうございました。」
そういって
親子は去って行った
時生君というのか。
私が変態みたいになるが
とてもかわいらしい子だった。
·····偶然にも
あの偉人の時生さんと
同じ名前なのは本当に偶然か?
時生さんの資料上の
この時代での年齢と
あの子の推定年齢は一致する。
·····いや考えすぎか。
それよりもあの子は
役にたった。
“スマホ“の研究用の資料を集めよう。
沢山の資料が集まった。
この時代は面白いな。
帰りたくないが、
頭の中の資料を
持ち帰って
研究したいし、
今日のところは
帰るとしよう。
怪奇の目で見られるかも
しれないが、
時代が移り変わっても
頭の固い学者達にも
この経験を話して
時間旅行を勧めよう。
そして私は帰り、
研究を進めた。
その後もなんどか
その時代には行くことになった。
···後でわかったことだが
やはりあの“時生“は
時生さんらしい··。
命を刻む時の旅 吉田圭一 @yshng
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