斎藤の国語辞典

寿 いちり

斎藤の国語辞典

ひとりだけ椅子がたりなくなっちゃってきのこに腰をおろしているよ




アボカドを大事な人の心臓とおもってそっと手にとってみる




斎藤の国語辞典がおっこちて言葉が床へちらばっちゃった




怪談をかたりはじめた三毛猫のまわりにみんなあつまってくる




この村のあちらこちらを金田一とかいうひとがかぎまわってる




ひとりだけぽつんと食べているぼくにちょうちょが声をかけてくれたよ




ドーナツの穴をのぞけばむこうから未来のぼくが手をふっている




のり弁をだれもしらないこの島で生きていくって決意した夜




ひとびとに忘れさられたどんぶりがブラックホールになってゆくんだ




キッチンのじゃがいもたちも朗読のラジオに耳をかたむけている

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斎藤の国語辞典 寿 いちり @nonsense_ichiri

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